導入:なぜ今、セントラルキッチンが注目されているのか?
飲食業界で多店舗展開を検討している経営者にとって、「セントラルキッチン(CK)」の導入は、利益率改善・オペレーション安定化・人材不足対策の三拍子を解決する強力な戦略です。
大手チェーンだけでなく、近年では小規模飲食店でも“スモールCK”の導入が進んでいます。本記事では、セントラルキッチンの導入による具体的なメリット・デメリット、初期費用・ランニングコストの目安、さらに導入ステップまで徹底解説します。
背景・課題:多店舗運営でぶつかる「厨房の限界」
多店舗展開やゴーストキッチン展開を目指す飲食店が増える中、以下のような課題が浮上しています。
- 店舗ごとに仕込みの質がバラつく
- 経験者がいないと厨房が回らない
- 廃棄・ロスが読めず、原価率が不安定
- アルバイトだけでは再現が難しい
これらの問題を一気に解決できる手段が、「セントラルキッチンの導入」です。
セントラルキッチンとは?|仕組みと目的を再確認
セントラルキッチンとは、複数店舗の仕込み・調理を一括して行う拠点施設です。
店舗では基本的に仕上げ・盛り付けなどの軽作業のみを行い、調理のクオリティや効率を保つのが目的です。
◯ 主な機能
- 食材の一括仕入れと加工
- ソース・タレなどのセミ加工
- 食材の個別パッケージングと配送
◯ 運用形態
- 店舗の一角をCKにする「店内CK」
- 専用施設を借りる「独立CK」
- 他社と共同で借りる「シェア型CK」
セントラルキッチン導入のメリット5選
1. 人件費の削減
- 経験者を採用せずとも均一品質の提供が可能
- 店舗ごとの調理時間が短縮 → ホール人員に集中できる
2. 仕込みの品質均一化
- 本店と支店で味が違う…という悩みが解消
- 一括仕込みによって「ブランド味の再現性」が向上
3. 廃棄ロスの最小化
- 食材の在庫管理・消費期限管理を一元化できる
- 発注と消費の予測が立てやすくなり、原価率も安定
4. 生産性の向上と回転率UP
- 店舗の厨房面積を減らせる → 客席数を増やせる
- 提供スピード向上により回転数UP → 売上向上に貢献
5. 新業態・ゴースト店舗との相性が良い
- デリバリー専門店舗や業態転換の際にも展開が容易
- 他店舗展開との連携でスケールメリットが最大化
セントラルキッチン導入のデメリットとリスク
デメリット | 内容 |
---|---|
初期費用が高額 | 設備費・配送車・冷蔵庫など投資が必要 |
ロジスティクスの手間 | 毎日の配送計画・運転・保管が課題 |
衛生管理の難易度 | 大量仕込みにより、HACCP対応が必須 |
味のカスタマイズ性が減少 | 店舗ごとのアレンジがしづらくなる |
人材分散 | CKと店舗に人材を分ける必要がある |
コスト試算|セントラルキッチン導入にかかる費用の目安
■ 初期費用(例:10坪の小型CKの場合)
項目 | 費用目安 |
---|---|
厨房設備(冷蔵庫・コンロ・シンク等) | 約300万円 |
内装・衛生設備費 | 約100万円 |
家賃保証金等(保証金+仲介料) | 約100万円 |
配送車両(軽冷蔵車など) | 約150万円 |
その他什器・小物 | 約50万円 |
合計 | 約700万円〜800万円 |
■ 月額ランニングコスト
項目 | 費用目安(月) |
---|---|
賃料(10坪) | 約15〜25万円 |
水道光熱費 | 約5〜10万円 |
人件費(1〜2名) | 約25〜35万円 |
配送コスト | 約5〜10万円 |
消耗品費 | 約3万円前後 |
合計 | 月額約60〜80万円前後 |
※費用は東京近郊を前提とした目安です。地方やシェア型CKの場合は大幅に下がる可能性もあります。
セントラルキッチン導入の判断基準
店舗数 | 導入の判断 |
---|---|
1店舗のみ | × 不要。むしろ効率が落ちる可能性あり |
2〜3店舗 | △ 店舗内仕込み or シェア型CKで試験導入 |
4店舗以上 | ◎ 専用CKで仕組み化すれば利益構造が改善 |
デリバリー専門 | ◎ ゴースト店舗との連携でコスト効率◎ |
導入支援に使えるツール・サービス
▼ セントラルキッチン設計・委託系サービス
- テンポス厨房館(https://www.tenpos.com/)
→ 厨房設備やレイアウト設計支援あり。小規模CKの構築も相談可能。 - シェア型CKサービス「kitchenBASE」
→ 都市部で設備共用型のセントラルキッチンをレンタル可能
https://kitchenbase.jp/
よくある質問(FAQ)
Q. アルバイトだけでも回せますか?
A. はい。 セントラルキッチンでの仕込みを標準化すれば、アルバイトでも店舗運営が可能になります。
Q. 店舗から遠い場所でも機能しますか?
A. 要注意。 配送時間が30分を超えると品質・温度管理が困難になります。車で15分圏内が理想。
Q. 保健所の許可は別途必要ですか?
A. はい。 通常の飲食営業許可とは別に、セントラルキッチン用の申請が必要になります(地域による)。
まとめ|CKは「効率」と「成長」を同時に手に入れる仕組み
セントラルキッチンは、単なる「厨房の外注先」ではなく、利益構造そのものを変える戦略施設です。
多店舗展開や人手不足の中でも高品質を維持し、回転率と粗利を同時に改善するには、避けて通れない選択肢になりつつあります。
まずはスモールスタート(1室レンタルや店内仕込みの一元化)からでも十分です。
“厨房を経営資源にする”という視点を持つことが、次のステージに進む鍵になります。
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