飲食店 BGM 著作権ガイド【2026年改正対応】|Spotify・CD・有線放送と使用料

木目調の飲食店客席に設置された小型スピーカーと業務用BGM機器
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結論からいうと、飲食店のBGMは、店舗での業務利用と権利処理の範囲が書面で確認できる業務用BGMサービスを選ぶと管理しやすくなります。

市販CDを購入した、SpotifyやApple Musicの有料プランに加入した、店長個人のスマートフォンで再生している――これだけでは、店内で音楽を流すための条件を満たしたことにはなりません。楽曲の著作権、音源サービスの利用規約、CDや配信音源をコピーした場合の権利を分けて確認する必要があります。

Spotifyは、バーやレストランなどの事業所で公に再生できないことを公式に案内しています。Appleメディアサービスも、原則として個人利用・非商用利用に限定されています。JASRACなどへ著作権使用料を支払っても、個人向け配信サービスの規約違反が解消されるわけではありません。Spotify「公共および商業的な場所でSpotifyを使用する」、Appleメディアサービス利用規約

本記事では、2026年10月16日時点の公式資料を基に、飲食店がBGMの再生方法を選び、必要な契約を確認し、2026年に成立した著作権法改正へ備える実務を解説します。

目次

2026年改正は成立済みだが、まだ施行されていない

2026年6月17日に著作権法改正法が成立し、同年6月24日に令和8年法律第48号として公布されました。改正の中心は、CDやインターネット配信音源などの商業用レコード等が店舗で公に再生・伝達された場合に、実演家とレコード製作者が二次使用料を受け取れる「レコード演奏・伝達権」の創設です。文化庁「令和8年特別国会 著作権法改正について」

ただし、2026年10月16日時点では改正法は未施行です。施行日は2026年6月24日から3年以内の範囲で政令により定められます。具体的な施行日、指定団体、二次使用料規程は今後決まるため、現時点で将来の追加負担額を断定することはできません。

施行後の二次使用料は、作詞者・作曲者などの著作権者に関する現在のJASRAC・NexToneの使用料とは別の権利に基づくものです。改正法は再生を禁止できる許諾権ではなく、実演家・レコード製作者の二次使用料請求権を定めています。

飲食店が今すぐ行うべき対応は、将来分を独自に試算して支払うことではありません。利用中のBGM事業者に、改正法施行後の二次使用料をサービス料金に含める予定があるか、店舗側で追加手続きが必要になるかを確認できる体制を整えましょう。

飲食店BGMの著作権対応は再生方法で決まる

判断を「音楽を流すかどうか」だけで終わらせず、どこから音源を取得し、どの機器で、誰に向けて再生するかまで分解することが重要です。

再生方法 現在の基本対応 2026年改正への備え
権利処理の範囲が明記された業務用BGMサービス 契約に含まれる管理団体、店舗数、再生区画、端末数を確認する 施行後の二次使用料を事業者が処理するか確認する
Spotify、Apple Musicなどの個人向けサービス 原則として店舗BGMには使わず、業務利用可能なサービスへ切り替える 改正法への対応以前にサービス規約上の問題がある
市販CDをそのまま再生 管理楽曲に応じてJASRAC、NexToneなどへの手続きを確認する 施行後は商業用レコード等の二次使用料も確認する
CDをスマートフォンやUSBへコピーして再生 店内再生に加え、複製権と著作隣接権者の許諾を確認する 施行後の公の再生に関する二次使用料も別に確認する
テレビ・ラジオ放送を家庭用受信装置でそのまま流す 著作権法上、手続きが不要となる場合がある 録音再生やインターネットラジオと混同しない
自作曲、保護期間が満了した楽曲、店舗利用可能な音源 店舗での公衆向け再生、複製、期間、店舗数などの条件を確認する 第三者の実演や市販音源を使用していないか確認する
生演奏、DJ、カラオケ 通常のBGMとは別の利用方法として手続きを確認する BGM契約だけで対応できると判断しない

業務用BGMでも「すべての権利が処理済み」とは限らない

JASRACは、同協会と利用許諾契約を締結しているBGM音源提供事業者について、事業者が店舗に代わってJASRACへBGMの著作権使用料を支払う仕組みを案内しています。対象事業者から音源提供を受ける場合、店舗が個別にJASRACと契約する必要がないケースがあります。JASRAC「利用許諾契約を締結している音源提供事業者一覧」

契約前には、次の内容を事業者へ書面で確認してください。

  • JASRAC管理楽曲のBGM使用料がサービス料金に含まれるか
  • NexTone管理楽曲を含む場合の処理方法
  • 提供音源を飲食店の客席で公に再生できるか
  • オフライン再生や端末への一時保存が認められるか
  • 1契約で利用できる店舗数、フロア数、再生端末数
  • テラス、待合スペース、店外スピーカーが対象に含まれるか
  • CD、生演奏、DJ、カラオケを追加した場合も契約対象になるか
  • 改正法施行後のレコード演奏・伝達権に関する二次使用料を誰が処理するか

「業務用」「商用利用可」という表示だけで判断せず、契約書やFAQに飲食店の店舗BGMとして公衆に再生できることが明記されているかを確認しましょう。

JASRACへ支払えばSpotifyを流せる、とは限らない

飲食店のBGMでは、少なくとも次の4項目を分けて考える必要があります。

1.曲そのものの著作権

作詞者・作曲者などが持つ楽曲の権利です。JASRACやNexToneが管理する曲を店内BGMとして利用する場合、それぞれの管理範囲に応じた手続きが問題になります。

NexToneの2026年4月1日実施の使用料規程にもBGMの利用区分があり、店舗面積別の基準額に「著作物利用比率」を乗じる仕組みが定められています。自店で市販CDなどを選んで再生する場合、「JASRACだけを確認すれば必ず完了する」とは限りません。利用楽曲の管理状況と音源提供事業者の契約範囲を確認してください。NexTone「使用料規程(2026年4月1日実施)」

2.音源サービスの利用規約

SpotifyやApple Musicなどは、規約の範囲内でサービスやコンテンツを利用できる仕組みです。月額料金を支払っていても、店舗での商業利用まで認められるとは限りません。

著作権管理団体との契約と、音楽配信サービスの利用規約は別問題です。JASRACなどへ支払ったことを理由に、個人向け配信サービスを店舗で使用できるわけではありません。

3.CDや配信音源をコピーする権利

市販CDをCDプレーヤーでそのまま再生する場合と、CDの曲をパソコンへ取り込み、スマートフォンやUSBメモリーへコピーして流す場合は同じではありません。

JASRACは、インターネット配信音源や市販CDを別の媒体へコピーしてBGMに使う場合、別途、複製の許諾が必要であり、著作隣接権者への確認も必要になる場合があると案内しています。市販CDをそのまま再生するだけであれば、この複製に関する手続きは不要です。JASRAC「BGMオンライン申請」

店長がCDをリッピングしてUSBへ入れる運用や、配信音源を録音して繰り返し流す運用は避けてください。利便性のために再生方法を変更すると、当初の契約範囲から外れる可能性があります。

4.改正法施行後の実演家・レコード製作者への二次使用料

2026年改正法の施行後は、商業用レコード等を客に聴かせるため公に再生・伝達する場合、実演家とレコード製作者に関する二次使用料が加わります。

これは、現在の著作権使用料やコピー時の許諾とは異なる権利です。具体的な料金や手続きは、指定団体が利用者代表との協議などを経て二次使用料規程を定めた後に確定します。施行前の段階で金額を断定する情報には注意してください。

市販CDをそのまま流す場合の注意点

市販CDをそのまま店内で再生する場合、コピーに関する手続きは不要でも、管理楽曲を公に演奏する著作権の手続きが必要になり得ます。「CD代を支払ったから店で自由に流せる」という扱いにはなりません。

ただし、JASRACと契約している音源提供事業者からBGMの提供を受けている店舗について、JASRACは、有線音楽放送とCDの両方をBGMとして流す場合も店舗の個別手続きは不要と案内しています。

この取扱いは、JASRACの管理範囲に関する案内です。NexTone管理楽曲、サービス契約上の制限、CDのコピー、改正法施行後の二次使用料まで一律に処理されることを意味しません。契約先へ書面で確認してください。

飲食店BGMの著作権使用料はいくらか

JASRACのBGM使用料規程では、一般の店舗が年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合、次の税抜基準額が定められています。JASRAC使用料規程「第12節 BGM」

店舗等の面積 年間使用料の基準額(税抜)
500平方メートルまで 6,000円
1,000平方メートルまで 10,000円
3,000平方メートルまで 20,000円
6,000平方メートルまで 30,000円
9,000平方メートルまで 40,000円
9,000平方メートル超 50,000円

2026年度、JASRACはBGM包括使用料に反映する管理楽曲のみなし利用割合を99.55%としています。500平方メートルまでの年間契約では、6,000円に99.55%と消費税相当額を反映した請求例が6,570円です。この割合は2026年4月から2027年3月まで適用され、年度ごとに見直されます。JASRAC「2026年4月以降のBGM包括使用料の利用割合について」

6,570円は、2026年度におけるJASRAC分の請求例です。業務用BGMサービスの月額料金、機器代、NexTone管理楽曲の取扱い、音源をコピーする場合の許諾、改正法施行後の実演家・レコード製作者に関する二次使用料は別に確認する必要があります。

「年間6,570円を払えば、すべての音源をどの方法で流してもよい」という意味ではありません。業務用BGMサービスを比較するときは、月額料金だけでなく、権利処理の範囲、再生機器、通信、保守、改正法への対応方針まで確認しましょう。

テレビやラジオなら手続き不要なのか

著作権法第38条第3項には、通常の家庭用受信装置を使って放送番組等を公に伝達する場合の例外があります。文化庁の令和8年度著作権テキストでも、喫茶店に置いたテレビなど通常の家庭用受信機による伝達は、営利目的でも例外が適用され得ると解説されています。文化庁「著作権テキスト―令和8年度版―」

JASRACも、テレビやラジオの放送をそのまま流す場合を、法律上BGMの手続きが不要となる利用方法として案内しています。ただし、次の場合は同じ扱いになるとは限りません。

  • インターネットラジオや一般の音楽配信サービスを再生する
  • 放送を録音・録画し、後から再生する
  • 通常の家庭用受信装置とはいえない設備を使う
  • 見逃し配信やオンデマンド配信を上映する
  • スポーツ中継や映像作品を店舗利用が認められていない配信契約で上映する
  • 番組を店のSNS、ウェブサイト、店外モニターなどへ再配信する

著作権法上の例外が適用されても、放送受信契約や映像配信サービスの店舗利用規約など、別の契約問題は残ります。「テレビならすべて無料」と一括りにしないでください。

開業前・営業中に行うBGM権利確認の8ステップ

ステップ1.再生場所を洗い出す

客席だけでなく、入口、テラス、個室、トイレ、待合スペース、店外スピーカーも確認します。複数フロアや離れた区画がある場合、1契約でどこまで利用できるかを確認してください。

ステップ2.音源の入手元を記録する

サービス名、契約プラン、契約者、再生端末、ログインアカウント、再生するCDを一覧にします。「前任の店長が設定したので分からない」という状態を残さないことが重要です。

ステップ3.規約で店舗利用の可否を確認する

「商用利用可」という表示だけでなく、「飲食店内で不特定多数の客へBGMとして再生できるか」を確認します。動画制作への商用利用は認めていても、店舗BGMとしての利用を認めていない音源があります。

ステップ4.著作権管理団体への支払い範囲を確認する

業務用BGM事業者には、次のように質問すると確認漏れを減らせます。

飲食店の客席でBGMとして利用予定です。料金にはJASRACおよびNexToneの管理楽曲に関する店内利用の手続きがどこまで含まれますか。店舗側で必要な申請、使用料、利用実績報告があれば書面でご案内ください。

回答メールや契約資料はPDFなどで保存します。

ステップ5.2026年改正後の対応方針を確認する

次の質問も契約先へ伝えておきましょう。

令和8年法律第48号によるレコード演奏・伝達権の施行後、実演家・レコード製作者に関する二次使用料は貴社が処理する予定ですか。店舗側の追加契約や料金が必要になる場合、いつ、どの方法で案内されますか。

現時点で確定回答が得られない場合は、施行日決定後に再確認する担当者と期限を決めます。

ステップ6.禁止する再生方法を店舗ルールにする

  • スタッフ個人のSpotifyやApple Musicを店内スピーカーへ接続しない
  • CDを無断でスマートフォンやUSBへコピーしない
  • 客の要望を受けて個人アカウントから楽曲を再生しない
  • 動画サイトの音楽をBGM代わりに流さない
  • 放送や配信を録音して繰り返し再生しない
  • 生演奏、DJ、カラオケを行うときは事前に経営者へ申請する

ステップ7.証拠書類を店舗別に保存する

  • サービスの契約書、申込書、請求書
  • 店舗利用を認める利用規約と取得日
  • 事業者から受け取った権利処理範囲の回答
  • JASRAC、NexToneなどの許諾書類
  • 使用端末、スピーカー、再生区画の一覧
  • 契約開始日、更新日、解約日
  • 改正法施行後の対応に関する事業者の案内

多店舗経営では、店舗名と所在地が契約対象に含まれているかを店舗ごとに確認してください。

ステップ8.選曲や音量の最適化は権利確認後に行う

BGMは店舗の世界観や滞在体験に関わりますが、選曲の工夫より先に利用条件を整える必要があります。権利関係を確認した後の運用は、店内BGMをAIで最適化する方法も参考にしてください。

内装、照明、音楽を一貫させる考え方は、飲食店は「世界観」で選ばれる!お客様をファンにする店内装飾とブランディングの作り方で解説しています。

飲食店BGMで起こりやすい6つの勘違い

「有料プランだから店で流せる」

料金の有無と業務利用の可否は別です。個人向け有料プランでも、規約が個人・非商用利用に限定されていれば店舗BGMには使えません。

「CDを買ったから自由に使える」

CDの購入は、そのCDを所有することです。管理楽曲を店内で公に再生するための著作権手続きまで一緒に購入したことにはなりません。

「小さな個人店なら対象外」

JASRACのBGM使用料は500平方メートルまでの区分から設定されています。客席数が少ないことや、音量が小さいことだけで手続き不要とは判断できません。

「著作権フリーなら何にでも使える」

一般に「著作権フリー」は法律上の統一名称ではなく、提供者ごとに意味が異なります。店舗利用、公衆への再生、複製、利用期間、店舗数、クレジット表示の条件を確認してください。

「BGM契約でライブやカラオケもできる」

JASRACは、BGM契約ではBGM以外の方法による音楽利用はできないと案内しています。周年イベント、店内ライブ、DJ、カラオケを追加するときは別途確認が必要です。

「2026年改正分をもう支払わなければならない」

2026年10月16日時点で、レコード演奏・伝達権に関する改正法は未施行です。具体的な施行日と二次使用料規程が決まる前に、将来分を独自計算して支払う必要はありません。公式発表と契約先からの案内を確認してください。

開業前のBGMチェックリスト

  • 再生サービスの名称とプランが決まっている
  • 飲食店での業務利用が規約上認められている
  • JASRAC、NexToneなどの処理範囲を確認した
  • 複数店舗、複数区画、複数端末の条件を確認した
  • CDや配信音源を無断でコピーしていない
  • 契約書、規約、回答メールを保存した
  • スタッフ個人の音楽アカウントを接続しないルールを作った
  • 生演奏、DJ、カラオケはBGMと分けて確認する
  • 改正法施行後の対応を再確認する担当者を決めた
  • 契約更新日と管理責任者を決めた

BGMの確認は、営業許可や設備確認に比べて後回しになりがちです。飲食店開業直前1ヶ月でやるべき準備チェックリストにも組み込んでください。

よくある質問

Q.2026年の著作権法改正で、今すぐ店舗の支払いは増えますか?

2026年10月16日時点では改正法は未施行なので、レコード演奏・伝達権に基づく二次使用料の支払いはまだ始まっていません。施行日は2026年6月24日から3年以内に政令で定められ、具体的な料金は指定団体の二次使用料規程などにより決まります。

Q.店内でラジオを小さく流すだけでも申請が必要ですか?

通常の家庭用受信装置でラジオ放送をそのまま流す場合は、著作権法上の例外に該当し、JASRACのBGM手続きが不要となる場合があります。インターネットラジオ、録音した番組、家庭用受信装置以外での利用は同じとは限りません。

Q.500平方メートル以下なら年間6,570円だけで済みますか?

6,570円は、2026年度のみなし利用割合と消費税相当額を反映したJASRAC分の請求例です。BGMサービス料金、機器代、NexTone管理楽曲、音源のコピー、サービス利用規約、改正法施行後の二次使用料は別に確認する必要があります。

Q.店舗スタッフが自作した曲なら自由に流せますか?

作詞・作曲、演奏、音源制作の権利を当該スタッフが単独で保有し、第三者へ管理を委託していなければ、本人から店舗利用の許可を得る方法が考えられます。共同制作者、サンプル音源、制作ソフト付属素材のライセンスも確認し、許可を書面で残してください。

Q.無料音源サイトからダウンロードすれば問題ありませんか?

無料か有料かではなく、ライセンス条件で決まります。「動画には使えるが店舗BGMには使えない」「1店舗のみ」「クレジット表示が必要」といった条件もあります。利用規約のURL、取得日、音源名、ライセンス文面を保存しましょう。

Q.月1回だけ店内ライブを開く場合もBGM契約で足りますか?

通常の背景音楽と、客に聴かせることを目的とした生演奏では利用区分が異なります。開催日、演奏曲、入場料、席数、演奏形態を整理し、管理団体へ事前に確認してください。

まとめ

飲食店のBGMでは、「曲の著作権」「音源サービスの規約」「コピーの有無」「改正法施行後の実演家・レコード製作者への二次使用料」を分けて確認する必要があります。

個人向けSpotifyやApple Musicを店内で流す運用は避け、業務用BGMサービスを選ぶ場合も、権利処理の範囲を契約書や回答メールで確認してください。

2026年にレコード演奏・伝達権を創設する法改正が成立しましたが、2026年10月16日時点では未施行で、施行日と二次使用料額は確定していません。現行の手続きを適切に行ったうえで、文化庁、契約中のBGM事業者、権利管理団体からの最新案内を確認できる運用を整えましょう。

参考資料

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