飲食店 害虫対策マニュアル|ねずみ・昆虫の年2回以上の駆除・IPM・記録保存

密閉容器や排水口の蓋を使って害虫・ねずみ対策を行う清潔な飲食店厨房
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飲食店の害虫・ねずみ対策は、発生後に薬剤をまくだけでは不十分です。「侵入させない」「餌・水・隠れ場所をなくす」「定期的に調査する」「結果を記録して改善する」という仕組みで運用します。

食品衛生法施行規則では、原則として1年に2回以上、ねずみ・昆虫の駆除作業を実施し、その記録を1年間保存することが定められています。ただし、発生場所、生息場所、侵入経路、被害状況を定期的かつ統一的に調査し、その結果に基づいて必要な措置を講じるIPM(総合的有害生物管理)により目的を達成できる場合は、施設の状況に応じた方法と頻度で実施できます。e-Gov法令検索「食品衛生法施行規則」

したがって、「年2回だけ薬剤を散布する」「虫を見つけてから対応する」という運用では、発生源や侵入経路を見落とすおそれがあります。本記事では、2026年9月4日時点の法令・厚生労働省資料に基づき、小規模な飲食店でも実行できる点検頻度、記録項目、発見時の初動、専門業者の選び方を具体的に解説します。

目次

飲食店の害虫・ねずみ対策で守るべき4つの基準

食品衛生法施行規則第66条の2第1項に関係する別表第17では、ねずみ・昆虫対策について、次の基準を定めています。

管理項目 法令上の内容 店舗での実務
侵入・繁殖の防止 施設と周囲を適切に維持し、網戸、トラップ、排水溝の蓋などにより侵入を防ぐ 出入口、換気口、排水口、配管貫通部、壁・天井の隙間を点検する
駆除またはIPM 原則として1年に2回以上駆除する。定期調査と必要な措置により目的を達成できる場合は、施設に応じた方法・頻度にできる 日常点検、トラップ調査、清掃、補修、捕獲、必要な範囲での薬剤処理を組み合わせる
薬剤による汚染防止 殺そ剤・殺虫剤で食品や添加物を汚染しない 食品や食器を露出したまま噴霧せず、製品表示に従って使用場所、換気、再入室条件などを管理する
食品・資材の保護 原材料、製品、包装資材などを容器に入れ、床・壁から離して保存する。開封後は蓋付き容器などで保護する 粉類、米、乾麺、香辛料、紙ナプキン、テイクアウト容器まで保管方法を決める

害虫対策を清掃担当者だけの仕事にせず、衛生管理計画の一部として、点検方法、担当者、異常時の措置、記録方法を定めることが重要です。厚生労働省「食品衛生法施行規則(別表17~20)の抜粋」

「年2回以上」は必ず薬剤を散布するという意味ではない

法令上の原則は年2回以上の駆除ですが、定期的かつ統一的な調査と、その結果に基づく措置によって目的を達成できる場合は、施設に応じた方法・頻度で実施できます。厚生労働省の施行通知は、この方法をIPMの考え方を取り入れた防除法と説明しています。厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について」

IPMでは、捕獲数や痕跡を調べ、隙間の補修、清掃、乾燥、保管方法の改善、物理的な捕獲を優先し、必要な場所に限定して薬剤を使用します。IPMを採用する場合も、単に「虫を見なかった」と判断するのではなく、調査場所と方法を統一し、結果と措置を記録する必要があります。

薬剤より先に整える「4層防除」の実務

飲食店の害虫対策は、次の4層を順番に整えると、原因を特定しながら再発を防ぎやすくなります。

第1層:侵入経路を塞ぐ

  • 裏口や搬入口のドア下に隙間がないか確認する
  • 給排水管、ガス管、電気配線の貫通部を塞ぐ
  • 開放する窓や換気口に、破損のない網を設置する
  • 排水口や側溝の蓋・目皿を点検し、破損を放置しない
  • 納品された段ボールを厨房や食品庫へ長期間置かない
  • 建物外周のごみ、落ち葉、空容器、不要什器を片付ける

厚生労働省の施行通知でも、定期清掃、排水溝の洗浄、床・壁・天井の隙間や割れ目の補修が、繁殖場所の排除と侵入防止に含まれると説明されています。

第2層:餌・水・隠れ場所をなくす

閉店時に見える床面がきれいでも、冷蔵庫の下、調理台の脚周り、排水溝内部、製氷機周辺、グリストラップ付近に油分や水分が残っていれば、害虫の発生・定着につながる可能性があります。通常の床清掃だけでなく、機器の下や裏側まで清掃計画に入れます。

  • 生ごみは蓋付き容器に入れ、容器自体も洗浄する
  • 排水溝は固形物と汚泥を除去してから洗浄する
  • 布巾、モップ、スポンジを濡れたまま放置しない
  • シロップ、酒類、油、粉類の垂れやこぼれを当日中に除去する
  • 開封済みの食材は蓋付きまたは密閉できる容器へ移す
  • 使っていない紙箱、紙袋、包装資材をため込まない

第3層:モニタリングで発生場所を特定する

粘着トラップや捕そ器は、設置するだけでは管理になりません。厨房平面図に設置場所と番号を記載し、「いつ、どこで、何が、どの程度確認されたか」を追跡します。

調理中の食品を汚染せず、従業員の動線や清掃を妨げない場所を選びます。殺そ剤を含むベイト剤などを使用する場合は、食品や食器へ接触せず、従業員や利用者が誤って触れないよう、製品表示と専門業者の指示に従って管理してください。

店舗が設定する頻度の例としては、毎日の目視、週1回の重点箇所確認、月1回のトラップ集計を組み合わせる方法があります。これは法定の一律頻度ではありません。業態、建物、季節、過去の発生状況に応じて調整します。

第4層:必要な場所だけを防除する

発生が確認された場合は、対象種、発生源、侵入経路を確認してから、清掃、廃棄、隙間の補修、捕獲、薬剤処理を組み合わせます。原因を残したまま薬剤だけを使用すると、再発を防げません。

殺そ剤や殺虫剤は、対象害虫と使用場所に適合する製品を選び、表示された使用方法を守ります。食品、食器、調理器具、包装資材への飛散を防ぎ、表示に換気時間や再入室条件がある場合は従ってください。薬剤が付着した、または付着のおそれがある食品接触面は、表示や専門業者の指示に従って営業再開前に洗浄します。

害虫・ねずみ別に確認する場所と初期対応

対象 確認しやすい場所・痕跡 最初に行う対応
ゴキブリ類 冷蔵庫や製氷機のモーター周辺、排水溝、配管部、什器の隙間。ふん、卵鞘、死骸にも注意 油分と食品残渣を除去し、隙間を確認する。トラップで発生範囲を調べる
コバエ・チョウバエ類 排水溝、グリストラップ、ごみ容器、空き瓶、濡れた清掃用具 有機物の膜や汚泥を物理的に除去し、水分、ごみ、排水設備の管理を見直す
貯穀害虫 小麦粉、米、乾麺、香辛料、パン粉などの乾燥食品と、その周辺の棚 対象ロットを隔離し、周辺在庫を点検する。棚を清掃し、密閉保管へ切り替える
ねずみ 搬入口、天井裏、配管貫通部、ごみ置場。ふん、かじり跡、足跡、包装の破損に注意 汚染が疑われる食品・資材を使用せず隔離する。侵入経路を確認し、管理会社や専門業者へ連絡する

ねずみの痕跡がある場合は、見つけた1か所だけで判断しないことが重要です。天井裏、壁内、共用配管、共用ごみ置場など、店舗側だけでは調査できない場所が原因の場合があります。テナント店舗は、管理会社や貸主にも連絡し、共用部を含めて確認してください。

毎日・毎週・毎月・年次で回す点検スケジュール

以下は、小規模飲食店向けの運用例です。日常点検の頻度は法令で一律に定められていないため、自店の構造、業態、季節、発生履歴に合わせて衛生管理計画へ落とし込みます。

頻度 点検・作業内容 担当例
毎日の始業前 ふん、死骸、包装の破損、異臭、トラップ周辺の異常を目視する 開店担当者
毎日の閉店時 食品の密閉、生ごみ処理、床・排水溝の清掃、水分除去、裏口の閉鎖を確認する 閉店担当者
週1回 冷蔵庫下、棚裏、配管部、製氷機周辺、ごみ置場などの重点箇所を確認する 衛生担当者
月1回 トラップ結果を集計し、平面図と記録表へ反映する。網戸、蓋、ドア下、隙間の破損も確認する 食品衛生責任者
年2回以上 原則となる駆除作業を実施する。IPMを採用する場合は、計画した頻度で統一的な調査と必要な措置を実施する 経営者・食品衛生責任者・専門業者
年1回 年間記録を振り返り、発生地点、季節傾向、設備修繕、委託内容を見直す 経営者

「年2回以上」は、必ず6か月間隔でなければならないという規定ではありません。ただし、特定の時期に作業を集中させるのではなく、季節や発生リスクを考慮して年間計画を立てることが実務的です。

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虫やねずみを発見したときの初動手順

営業中に害虫や痕跡を見つけた場合は、反射的にスプレーを噴霧する前に、食品への影響範囲を確認します。

  1. 対象区画の作業を止める:発見場所周辺での調理、盛り付け、食品保管を一時停止します。
  2. 食品・資材を隔離する:接触や汚染が疑われる食品は提供せず、他の在庫と分けます。安全性を確認できない食品は再使用しません。
  3. 状況を記録する:日時、場所、対象または痕跡、写真、発見者、食品への影響を記録します。
  4. 発生源と侵入経路を確認する:排水設備、配管、搬入口、納品物、ごみ、機器下、壁や天井の隙間を調べます。
  5. 清掃・補修・防除を行う:原因に応じて残渣除去、洗浄、隙間補修、捕獲、薬剤処理を行います。
  6. 再点検してから使用を再開する:食品接触面と周辺設備を確認し、実施内容、使用薬剤、再開時刻を記録します。

次のケースは、店舗だけで解決しようとせず、専門業者や管理会社への相談を優先する実務上の目安です。

  • ねずみのふん、かじり跡、足跡が確認された
  • 複数の調理・保管区画で同じ害虫が確認された
  • 清掃やトラップ交換後も繰り返し捕獲される
  • 天井裏、壁内、共用配管など、店舗側で確認できない場所が疑われる
  • 食品への混入や、顧客からの申し出が発生した

消費者から健康被害の申し出を受けた場合や、異味、異臭、異物混入などについて健康被害につながるおそれを否定できない場合は、管轄保健所へ速やかに相談・報告してください。厚生労働省の通知でも、こうした苦情を受けた場合の保健所等への速やかな報告が示されています。厚生労働省「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針の改正について」

専門業者を選ぶときの確認項目

厚生労働省は、防除を外部事業者へ委託する場合、「建築物ねずみ昆虫等防除業」の登録を受けた事業者など、必要な専門知識を持つ適切な事業者を選ぶよう示しています。都道府県知事の登録を受けた事業者は、各都道府県のホームページなどで確認できます。厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」

この登録制度は、一定の機械器具、専用保管庫、防除作業監督者、従事者研修などの基準を満たす営業所を都道府県知事が登録する制度です。ただし、事業登録は任意であり、未登録の事業者が防除業務を行うこと自体は禁止されていません。登録の有無だけで判断せず、飲食店での調査・施工経験、報告内容、再発時の対応も比較してください。厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」

見積もり前に確認するチェックリスト

  • 現地調査をしたうえで、対象種、発生源、侵入経路を説明するか
  • トラップ配置図や調査結果を報告書で提出するか
  • 薬剤だけでなく、清掃、補修、保管方法の改善を提案するか
  • 使用する薬剤名、使用場所、注意事項、営業再開条件を事前に示すか
  • 食品、食器、調理器具、包装資材を保護する手順があるか
  • 作業後の再点検日と、再発時の対応範囲が明確か
  • 共用部に原因がある場合、管理会社との連携に対応できるか
  • 駆除作業や調査の実施記録を店舗へ交付するか

「厨房一式」とだけ記載された見積書では、調査、薬剤処理、隙間補修、廃棄物処理、再点検のどこまで含むか分かりません。対象区画、作業方法、使用薬剤、報告書、再施工条件をそろえて比較します。

害虫対策の記録に残すべき項目

原則となる駆除作業の実施記録は、1年間保存する必要があります。IPMを採用する場合も、定期調査と必要な措置によって目的を達成していることを説明できるよう、調査結果と改善履歴を保存してください。

IPM関連記録について法令上の保存期間を一律に「1年間」と置き換えるのではなく、衛生管理計画で合理的な期間を設定します。ただし、駆除記録との照合や前年同期との比較ができるよう、実務では害虫関連記録を少なくとも1年間保存する運用が分かりやすいでしょう。

記録項目 記入内容
確認日時・確認者 9月4日、閉店後、食品衛生責任者
場所 冷蔵庫Aの裏、トラップ番号G-03
確認内容 捕獲数、ふん、死骸、卵鞘、包装破損、侵入口の有無
食品への影響 影響なし、対象棚の商品を隔離、該当ロットを廃棄など
実施措置 清掃、排水洗浄、隙間補修、トラップ交換、業者依頼
薬剤情報 製品名、対象、使用場所、使用量、使用者、使用時刻
再確認 再点検日、捕獲結果、追加措置の有無
添付資料 写真、平面図、業者報告書、薬剤資料

紙では記入漏れや保管場所の分散が起きやすい場合、HACCP記録と一緒にデジタル管理する方法もあります。設定やデータ保存の流れは、飲食店 HACCP記録アプリ導入ガイド|厚生労働省公式アプリの設定・運用・CSV保存で解説しています。

開業前に実施する害虫対策チェック

害虫対策には、開店後よりも内装工事前・厨房機器搬入前の方が実施しやすい項目があります。特に居抜き物件では、既存機器の裏、天井裏、排水設備、残置物を確認せずに契約や工事を進めないことが重要です。

  • 床、壁、天井、巾木に隙間や破損がないか
  • 給排水管、ガス管、配線の貫通部が塞がれているか
  • 排水口、側溝、グリストラップを清掃・点検できるか
  • 搬入口と裏口のドア下に隙間がないか
  • 食品棚を床・壁から離して設置できるか
  • 冷蔵庫や製氷機の下・裏を清掃できるか
  • 建物の共用ごみ置場が適切に管理されているか
  • 前テナントの残置食品、段ボール、木製棚が残っていないか
  • 害虫発生時の連絡先と、貸主・店舗間の修繕区分を確認したか
  • 必要に応じて開業前の生息調査を専門業者へ依頼したか

開業直前は設備、採用、仕入れ、販促に追われ、衛生設備の確認が後回しになりがちです。害虫対策を含めた最終確認には、飲食店開業直前1ヶ月でやるべき準備チェックリスト|漏れなく確実に開業するための最終確認も活用してください。

飲食店の害虫対策に関するFAQ

Q. 年2回以上の駆除は、必ず専門業者に依頼する必要がありますか?

専門業者への委託が一律に義務付けられているわけではありません。営業者自身で必要な知識を備え、定期調査、清掃、補修、捕獲、記録を含むIPMを実施することも可能です。ただし、発生種や侵入経路を判断できない場合、ねずみが確認された場合、広範囲の薬剤処理が必要な場合は、専門知識を持つ事業者へ相談してください。

Q. 虫が見つからなければ、駆除も記録も不要ですか?

虫が見つからない場合でも、侵入防止と定期調査は継続します。原則は年2回以上の駆除と記録保存ですが、定期的かつ統一的な調査と必要な措置によって目的を達成できるIPMでは、施設に応じた方法・頻度にできます。「見かけなかった」だけでは、統一的な調査を実施したことにはなりません。

Q. 市販の殺虫スプレーを営業中に使用してもよいですか?

露出した食品、食器、調理器具、包装資材の近くでの噴霧は、食品汚染につながるため避けます。緊急時でも対象区画の作業を止め、食品や器具を隔離したうえで、製品表示に従って使用してください。広範囲に発生している場合や発生源が分からない場合は、むやみに噴霧せず専門業者へ相談します。

Q. テナントビルの共用部から侵入している場合は誰が対応しますか?

店舗内の食品衛生管理は営業者が行いますが、共用排水管、天井裏、共用ごみ置場などに原因がある場合は、貸主や管理会社との共同対応が必要です。賃貸借契約の修繕区分を確認し、写真、調査報告書、発生日、確認場所を添えて連絡してください。

Q. 駆除記録は何を1年間保存すればよいですか?

実施日、実施場所、対象、作業方法、使用薬剤、実施者、結果を記載した駆除作業の記録を保存します。専門業者へ委託した場合は、作業報告書、トラップ配置図、使用薬剤資料も一緒に保管すると、前年との比較や保健所への説明に役立ちます。

まとめ

飲食店の害虫・ねずみ対策で優先すべきことは、発生後の一斉駆除ではなく、侵入防止、清掃・乾燥、適切な保管、定期調査、記録、改善を継続することです。

  • 原則として1年に2回以上の駆除を行い、実施記録を1年間保存する
  • 定期的かつ統一的な調査と必要な措置によって目的を達成するIPMも選択できる
  • 薬剤より先に、侵入経路、餌、水、隠れ場所を減らす
  • トラップは番号と配置図で管理し、結果を時系列で比較する
  • 汚染が疑われる食品は提供せず、健康被害のおそれを否定できない場合は保健所へ相談・報告する
  • 外部委託では、現地調査、報告書、再点検まで含めて業者を比較する

まずは店舗平面図を用意し、出入口、排水口、配管部、食品庫、冷蔵庫周辺、ごみ置場、トラップの位置を記した「害虫管理マップ」を作成してください。点検場所、確認頻度、担当者、異常時の報告先を固定することが、見落としを減らす第一歩です。

参考資料

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