2026年の飲食店の年末調整は、最初にスタッフを「自店で年末調整する人」「掛け持ち先が主たる勤務先の人」「前職の源泉徴収票を待つ人」「退職者」に分けることが重要です。対象者を確定したうえで、2026年分の申告書と前職の源泉徴収票を回収し、国税庁の2026年分計算表または改正対応済みの給与ソフトで処理します。
2026年分は、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件などが改正されます。改正は原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。2026年11月までの毎月の源泉徴収をさかのぼって修正するのではなく、12月の年末調整から新制度を反映する点が実務上のポイントです。国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
飲食店 年末調整 2026年版の結論と期限
年末調整は、1年間に給与から源泉徴収した所得税・復興特別所得税の合計額と、そのスタッフが実際に納める年税額との差を精算する手続きです。正社員、パート、学生アルバイトという雇用区分ではなく、扶養控除等申告書の提出状況や勤務状況などで対象者を判定します。
| 時期・期限 | 飲食店が行うこと |
|---|---|
| 2026年10月下旬~11月上旬 | 対象者の分類、申告書の案内、前職源泉徴収票の回収開始 |
| 2026年11月中 | 社内提出期限を設定して書類を回収・差し戻し |
| 2026年最後の給与・賞与の支給時 | 年末調整を行い、還付額または不足額を精算 |
| 2027年1月12日 | 年末調整に係る源泉所得税等の納付期限。納期の特例を受けていない場合 |
| 2027年1月20日 | 納期の特例の承認を受けている場合の納付期限 |
| 2027年2月1日 | 源泉徴収票の交付、給与支払報告書などの提出期限 |
スタッフから年末調整書類を回収する社内期限について、全国一律の法定提出日はありません。給与計算や差し戻しに必要な日数を逆算し、11月中に店舗独自の期限を設定するのが実務的です。2027年の法定期限は、1月31日が日曜日のため2月1日となります。国税庁「令和8年分年末調整のしかた」
2026年分で変わる4つのポイント
1.基礎控除と給与所得控除は2026年分の表で計算する
2026年分では、基礎控除の最高額が104万円、給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられます。ただし、基礎控除額は本人の合計所得金額によって変わります。前年の計算表や自作の数式を流用せず、国税庁の2026年分資料または改正対応済み給与ソフトを使用してください。
2026年11月までの源泉徴収事務に変更はありません。改正後の控除額や給与所得控除後の給与等の金額の表は、2026年12月の年末調整から反映します。
2.「178万円まで所得税がかからない」と「親の扶養」は別
給与以外の所得がなく、基礎控除の最高額が適用される人は、2026年分の給与収入が178万円以下であれば所得税がかかりません。一方、親などが所得税の扶養控除を受けるための扶養親族の所得要件は、合計所得金額62万円以下です。収入が給与だけなら136万円以下が目安となります。年齢、生計同一など、所得以外の要件もあります。国税庁「パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
したがって、学生アルバイトから「178万円まで扶養内ですか」と聞かれても、一律に「大丈夫」と回答してはいけません。本人の所得税、親の所得税上の扶養、住民税、健康保険の被扶養者、親の勤務先の家族手当は、それぞれ基準が異なります。社会保険については、飲食店 社会保険【2026年10月改正】|月額8.8万円要件撤廃後の加入条件と手続きも確認してください。
3.19歳以上23歳未満の親族は特定親族特別控除を確認する
生計を一にする19歳以上23歳未満の親族について、合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合は、特定親族特別控除の対象になる可能性があります。収入が給与だけなら、136万円を超え197万円以下が目安です。
控除額は親族の所得に応じて63万円から3万円まで段階的に変わります。口頭で聞いた年収だけで処理せず、2026年分の「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」で確認します。国税庁「特定親族特別控除」
4.23歳未満の扶養親族がいる人は生命保険料控除の特例を確認する
2026年分以後、23歳未満の扶養親族がいる人について、2012年1月1日以後に締結した契約に係る新生命保険料の控除限度額が4万円から6万円へ引き上げられます。生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません。
該当者は前年の控除額をコピーせず、2026年分の保険料控除申告書と控除証明書を使って再計算してください。国税庁「生命保険料控除」
誰を自店で年末調整するか
| スタッフの状況 | 自店での年末調整 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 1年を通じて勤務し、年末も在籍 | 原則として対象 | 年末調整を行う日までに扶養控除等申告書を提出しているか |
| 学生・パート・短時間アルバイト | 条件を満たせば対象 | 雇用区分や勤務日数だけで除外しない |
| 掛け持ちで自店が主たる勤務先 | 原則として対象 | 自店に扶養控除等申告書を提出しているか |
| 掛け持ちで自店が従たる勤務先 | 原則として対象外 | 原則として乙欄で源泉徴収 |
| 2026年中の中途入社者 | 前職分を確認できれば対象 | 前職の源泉徴収票で給与・税額・社会保険料を確認 |
| 前職分を源泉徴収票などで確認できない人 | 年末調整できない | 本人に確定申告を案内 |
| 通常の中途退職者 | 原則として対象外 | 退職後1か月以内に源泉徴収票を交付 |
| 死亡退職、非居住者となった人など | 年の途中で対象になる場合がある | 国税庁の中途年末調整要件を個別確認 |
| 年間の確定給与が2,000万円超 | 対象外 | 本人による確定申告が必要 |
| 災害減免法による徴収猶予・還付を受けた人 | 対象外 | 本人による確定申告を確認 |
中途退職者であっても、死亡退職、海外転勤などにより非居住者となった場合、著しい心身の障害による退職、12月分の給与を受けた後の退職などは、年の途中で年末調整の対象になることがあります。国税庁「年末調整の対象となる人」
掛け持ちアルバイトは勤務時間の長さで判定しない
2か所以上から給与を受け取る人は、扶養控除等申告書を提出した勤務先が「主たる給与」の支払者となり、通常は甲欄で源泉徴収します。それ以外は「従たる給与」の支払者となり、原則として乙欄を使用します。
従たる勤務先の給与は原則として年末調整できません。店長が「自店の勤務時間が最も長い」「自店の給与が最も多い」という理由だけで主たる勤務先と判断してはいけません。国税庁「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」
中途入社者の前職給与を推測しない
中途入社者が前職にも扶養控除等申告書を提出して給与を受けていた場合、前職の給与、源泉徴収税額、社会保険料を合算して年末調整します。これらは前職の源泉徴収票などで確認しなければなりません。
確認できない場合は、給与明細や本人の記憶だけで見込み処理をせず、年末調整を行わないで本人に確定申告を案内します。国税庁「中途就職者の年末調整」
飲食店が確認・回収する年末調整書類
| 書類 | 主な用途 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 2026年分扶養控除等(異動)申告書 | 主たる勤務先、扶養親族、障害者、勤労学生等の確認 | 採用時の提出状況と年内の異動を確認。扶養親族がいない人も対象 |
| 2026年分基礎控除申告書等の兼用様式 | 基礎控除、配偶者控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除 | 前年様式を流用しない |
| 2026年分保険料控除申告書 | 生命保険料、地震保険料、本人が直接支払った社会保険料等 | 控除証明書や電子データと照合 |
| 住宅借入金等特別控除申告書等 | 住宅ローン控除 | 原則として2年目以後。証明書方式・調書方式に応じて確認 |
| 前職の源泉徴収票 | 中途入社者の前職給与の合算 | 2026年分か、支払者名や退職日が正しいか |
| 親族関係書類・送金関係書類等 | 国外居住親族に関する控除 | 親族の年齢や区分に応じた書類を確認 |
| 2027年分扶養控除等申告書 | 2027年最初の給与以後の源泉徴収 | 2026年分の年末調整書類と混同しない |
2026年分扶養控除等申告書は、本来、その年最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出する書類です。年末に初めて全員から回収するのではなく、未提出者や年内に家族状況が変わった人の有無を確認します。
扶養控除等申告書、基礎控除申告書、保険料控除申告書などは、原則として提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存します。税務署長から提出を求められた場合は提出が必要です。国税庁「給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」
年末調整書類と賃金台帳・出勤簿では保存根拠や保存期間が異なります。労務帳簿については、飲食店 法定三帳簿【2026年版】|労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作り方と保存期間を参照してください。
店舗で回す年末調整の7ステップ
ステップ1:対象者管理表を作る
氏名、在籍状況、主たる・従たる給与、扶養控除等申告書の有無、前職源泉徴収票、各種控除申告書、差し戻し状況を一覧化します。勤務日数の少ないアルバイトや休職者も漏らさないようにします。
ステップ2:申告書を案内し、社内期限を伝える
2026年分の公式様式を案内し、「申告書の提出期限」と「控除証明書や前職源泉徴収票が間に合わない場合の連絡期限」を分けて伝えます。2026年12月1日前から改正後の書類を提出してもらうことに問題はありません。
ステップ3:未提出者へ個別に催促する
一斉連絡だけで終わらせず、未提出者リストに基づいて個別に確認します。年末調整書類にはマイナンバー、所得、家族情報などが含まれるため、共用棚や店内のグループチャットで提出させない運用が必要です。
ステップ4:記載内容と証明書類を照合する
- 氏名、住所、生年月日に記載漏れがないか
- 配偶者や親族の金額が「収入」か「所得」かを混同していないか
- 勤労学生控除の要件を満たすか
- 生命保険料の契約区分、支払額、控除証明書が一致するか
- 中途入社者の源泉徴収票が2026年分か
- 国外居住親族の必要書類がそろっているか
ステップ5:年末調整の対象給与を確定する
対象となるのは、2026年1月1日から12月31日までに支払うことが確定した給与です。給与規程で12月勤務分を2027年1月10日に支給すると定めている場合、その給与は通常、2026年分には含めません。一方、2026年中に支給日が到来して支払いが確定した未払給与は対象に含めます。国税庁「年末調整の対象となる給与」
ステップ6:還付額または不足額を精算する
年間の源泉徴収税額が年調年税額より多ければ還付し、少なければ不足額を徴収します。給与明細では「年末調整還付」「年末調整不足額」など、通常の給与や手当と区別できる名称を使用すると問い合わせを減らせます。国税庁「年末調整の過不足額の精算」
ステップ7:交付・提出・納付・保存まで完了させる
2026年分の源泉徴収票は、原則として全受給者に2027年2月1日までに交付します。中途退職者には退職後1か月以内に交付します。給与支払報告書は、2027年1月1日現在の住所地の市区町村へ2027年2月1日までに提出します。
2027年1月1日以後は、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合、その内容について給与所得の源泉徴収票を税務署へ提出したものとみなされます。ただし、従業員本人への源泉徴収票の交付は引き続き必要です。国税庁「源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和8年分)」
飲食店で起きやすい6つのミス
- 学生だから年末調整しない:学生や短時間勤務でも、要件を満たせば対象です。
- 掛け持ち先の給与を自店で合算する:同時に受け取っている従たる給与は、自店の判断で年末調整へ加えません。
- 前職源泉徴収票がないまま見込み処理する:確認できなければ年末調整を行わず、確定申告を案内します。
- 「扶養内」を一つの金額で説明する:本人の所得税、親の税扶養、住民税、社会保険、家族手当を分けて説明します。
- 前年の申告書や計算表を流用する:2026年改正を反映できないため、年度表示を確認します。
- 2027年分扶養控除等申告書を2026年分と混同する:適用年と用途を明記して別管理します。
飲食店の年末調整に関するFAQ
扶養家族がいないアルバイトにも扶養控除等申告書は必要ですか?
自店を主たる勤務先とする場合は、扶養親族がいなくても提出が必要です。未提出の場合は原則として乙欄で源泉徴収し、自店では年末調整できません。
掛け持ち先でも年末調整をしてもらえますか?
原則として、年末調整を行うのは扶養控除等申告書を提出した主たる勤務先だけです。従たる勤務先の給与は、必要に応じて本人が確定申告で精算します。
前職の源泉徴収票が間に合わない場合は?
前職へ再発行を依頼してもらいます。年末調整までに前職の給与や税額を確認できなければ、店舗側で金額を推測せず、本人に確定申告を案内してください。
年末調整後に扶養人数の誤りが分かった場合は?
2026年12月31日までに扶養親族等の異動があった場合、2026年分の源泉徴収票を作成・交付する日までに異動後の扶養控除等申告書を受け取り、年末調整をやり直すことができます。控除対象者が減って徴収不足が生じた場合は、翌年1月末を過ぎていても訂正と不足税額の徴収が必要です。国税庁「年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき」
税理士へ依頼すれば店舗側の作業はありませんか?
計算を委託しても、対象者の判定、スタッフへの案内、書類回収、前職源泉徴収票の確認、給与データの確定は店舗側で行う必要があります。税理士が指定する提出期限とデータ形式を早めに確認してください。
まとめ
2026年の飲食店年末調整では、基礎控除や給与所得控除、扶養親族等の所得要件、生命保険料控除の改正を反映した2026年分の資料を使用します。
最初に行うべきことは、全スタッフを「自店で年末調整する人」「従たる給与の人」「前職源泉徴収票待ちの人」「退職者」に分類することです。その後、11月中を目安に必要書類を回収し、最後の給与・賞与で過不足額を精算してください。
本記事は2026年10月25日時点の国税庁資料に基づく一般的な実務整理です。国外居住親族、非居住者、死亡・出国、災害減免、現物給与など個別判断が必要なケースは、所轄税務署または税理士へ確認してください。

