飲食店のメニュー価格表示ルール|税込・テイクアウト・サービス料の実務チェック

飲食店のメニュー価格表示を確認するためのメニューカード、レシート、電卓を配置した卓上
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飲食店のメニュー価格表示では、消費者が実際に支払う税込価格を明瞭に示し、店内飲食とテイクアウトの税区分、サービス料などの追加条件、各媒体の価格をそろえることが重要です。

紙のメニューだけを直しても、店頭看板、券売機、QRオーダー、公式サイト、店舗が管理するGoogleビジネスプロフィール、デリバリーサービス、POSレジに旧価格が残っていれば、会計時のトラブルや税区分の誤りにつながります。

本記事では、2026年8月25日時点で確認できる国税庁、財務省、消費者庁の公表資料を基に、飲食店のメニュー価格表示を開業前や価格改定時に点検する方法を解説します。個別の税務判断は税務署や税理士、表示の適法性に関する判断は弁護士などの専門家に確認してください。

目次

飲食店のメニュー価格表示で確認する4項目

確認項目 確認する内容 よくあるミス
税込価格 課税事業者が消費者向けに価格をあらかじめ表示する場合は、税込価格を明瞭に示す 「1,000円+税」「1,000円(税別)」だけを表示する
税率区分 店内飲食は原則10%、酒類を除くテイクアウト・宅配は原則8%に区分する 店内と持ち帰りをPOS上で同じ税率に設定する
適用条件 席料、サービス料、対象時間、人数条件などを注文前に確認できるようにする 会計時に初めて追加料金を伝える
媒体の整合 紙、看板、Web、注文端末、POSなどの価格をそろえる 紙だけを改定し、QRメニューや券売機に旧価格を残す

総額表示は、課税事業者が消費者に対し、商品やサービスの価格をあらかじめ表示する場合に適用されます。表示媒体は店内メニューに限らず、看板、チラシ、ホームページ、電子メールなども対象です。国税庁「消費税のあらまし(令和8年6月)19.総額表示の義務付けは?」

総額表示の対象と正しい税込価格の書き方

消費者が支払額を一目で判断できるようにする

標準税率10%の商品を例にすると、次のような書き方が総額表示に該当します。

  • 1,100円
  • 1,100円(税込)
  • 1,100円(税抜価格1,000円)
  • 1,100円(うち消費税額等100円)
  • 1,000円(税込価格1,100円)

税込価格が明瞭であれば、税抜価格や消費税額を併記できます。「税込」という文字を必ず付ける必要はありませんが、表示された金額が最終的な支払額であることが分かる状態にしなければなりません。

一方、「1,000円+税」「1,000円(税別)」のように税抜価格しか確認できない表示は、課税事業者の消費者向け価格表示として適切ではありません。また、税込価格を読みにくい大きさや色で付記し、税抜価格だけを強く目立たせる表示も避けましょう。消費税込みかどうかを示さずに税抜価格だけを表示すると、税込価格だと誤認され、不当表示に該当するおそれがあります。消費者庁「表示に関するQ&A」Q18

総額表示の対象外になるもの

総額表示義務は、消費者に対して価格をあらかじめ表示する場合のルールです。次のものは、国税庁が示す総額表示義務の対象とは異なります。

  • 口頭だけで伝える価格
  • 見積書や契約書に記載する価格
  • 決済段階で作成する請求書や領収書の価格
  • 専ら事業者間取引のために表示する価格

ただし、総額表示義務の対象外だからといって、メニューと請求額の不一致や、適用条件を明らかにしない表示が許されるわけではありません。消費者が注文前に支払条件を理解できる運用が必要です。

価格改定時に確認する媒体

  • 紙メニュー、卓上POP、壁面メニュー
  • 店頭看板、電光掲示板、ショーケース内の価格札
  • 券売機、セルフレジ、タブレット、QRオーダー
  • 公式サイト、予約ページ、SNSの固定投稿やハイライト
  • 店舗が管理するGoogleビジネスプロフィールのメニュー
  • デリバリー・テイクアウト注文サービス
  • チラシ、宴会案内、一般消費者向けパンフレット
  • POSレジの商品マスターとレシート設定

現在の販促に使用しているSNS投稿に旧価格が残っている場合は、画像や本文を修正するか、投稿を削除・差し替えます。編集できない過去投稿は、投稿日だけに頼らず、旧価格であることを追記するなど、現行価格と誤認されないようにしてください。

店内飲食10%・テイクアウト8%の基本

2026年8月25日時点の消費税率は、標準税率10%と軽減税率8%です。飲食店では、同じ料理でも提供方法によって適用税率が変わることがあります。

取引 原則的な税率 判断のポイント
店内飲食 10% テーブル、椅子、カウンターなどの設備がある場所で飲食させる食事の提供
テイクアウト 8% 酒類を除く飲食料品を持ち帰り用として販売する場合
出前・宅配 8% 酒類を除く飲食料品を単に届ける場合
酒類 10% 持ち帰り販売でも軽減税率の対象外
ケータリング 10% 指定場所で加熱、調理、配膳、給仕などの役務を伴う場合

「店内飲食」か「持ち帰り」かは、飲食料品を提供する時点で、顧客に利用方法を確認するなどして判定します。宅配であっても、現地での調理や給仕などが含まれる場合は取引内容に応じた確認が必要です。国税庁「No.6102 消費税の軽減税率制度」

店内飲食とテイクアウトの価格表示は3方式

店内飲食とテイクアウトの両方を扱う店では、主に次の3方式があります。

  1. 両方の税込価格を表示する
    表示例:店内550円/テイクアウト540円
  2. 片方の税込価格を表示し、別価格になることを明記する
    表示例:550円(税込)※テイクアウトは別価格です
  3. 店内飲食とテイクアウトを同じ税込価格にする
    表示例:店内・テイクアウトとも550円(税込)

どちらか片方の税込価格だけを表示することも可能ですが、安いテイクアウト価格だけを表示し、店内飲食では高くなることを明瞭に示さない場合は、有利誤認に該当するおそれがあります。価格が異なる店では、両方の税込価格を併記する方法が最も分かりやすいでしょう。消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」

税込価格が同じでも税区分は分ける

店内飲食とテイクアウトを同じ550円に設定しても、適用税率が同じになるわけではありません。課税事業者は、POSや帳簿上で「店内10%」「持ち帰り8%」を区分し、注文時に利用方法を確認します。

価格改定とメニュー整理を同時に行う場合は、先に商品数と提供方法を確定してから税区分を設定すると、登録ミスを減らせます。メニュー全体の整理は、飲食店のメニュー構成基本ガイド|品数・単価・調理負担のバランスとは?も参考にしてください。

サービス料・席料・お通し代の表示方法

追加料金がある場合は、「金額または計算方法」「対象者」「対象時間」「適用条件」を注文確定前に確認できるようにします。

項目 分かりやすい表示例 避けたい表示
席料 17時以降は、お一人様550円(税込)の席料を頂戴します 会計時に初めて説明する
サービス料 ディナータイムは、税込の飲食代合計に対して10%をサービス料として加算します 「別途サービス料あり」だけで計算方法を示さない
お通し代 17時以降は、お通し代としてお一人様440円(税込)を頂戴します 無料サービスのように提供して後から請求する
人数条件 本コースは2名様から承ります。表示価格はお一人様分です 人数条件や一人当たりの価格であることを示さない
深夜料金 22時以降は、税込の飲食代合計に10%を加算します 対象時間や加算率が分からない

消費者庁は、販売価格を表示する場合、価格が適用される商品・サービスの範囲や顧客の条件を正確に表示する必要があると説明しています。追加料金は、メニュー冒頭、対象商品の近く、予約画面、注文端末など、注文前に自然に確認できる場所へ表示してください。消費者庁「表示に関するQ&A」Q20

注意書きが存在するだけで、必ず適切な表示になるわけではありません。文字の大きさ、表示場所、注文方法を含め、初めて来店した人が会計総額を予測できるかという視点で確認しましょう。

割引表示と料理名は景品表示法にも注意

根拠のない「通常価格」を使わない

「通常価格1,500円のところ1,000円」と表示する場合は、比較対象となる1,500円に販売実績などの根拠が必要です。

消費者庁は、「当店通常価格」などの過去価格を比較対象に使う一般的な考え方として、次の条件を示しています。

  • 表示時点からさかのぼる8週間において、その価格で販売していた期間が販売期間の過半を占める
  • その価格での販売期間が通算2週間以上ある
  • その価格で販売した最後の日から2週間を経過していない

これは一般的な目安であり、商品・サービスの販売期間や販売方法などによって個別に判断されます。開業直後などで通常価格の販売実績がない場合は、根拠のない比較価格を使わず、「2026年8月25日から31日まで1,000円(税込)」のように、実際の販売価格と適用期間をそのまま示す方法が安全です。消費者庁「二重価格表示」

料理名、産地、銘柄の表示にも根拠が必要

景品表示法の対象は価格だけではありません。料理名、メニュー説明、店頭POP、インターネット上の表示、店頭での説明なども対象になります。

例えば、「宮崎牛ステーキ」と表示しながら、仕入れ状況によって別の銘柄牛を提供する場合は問題となり得ます。具体的な銘柄名を強く表示した場合、注意書きだけで誤認を解消できるとは限りません。消費者庁「表示に関するQ&A」Q45〜Q48

「国産」「○○県産」「自家製」「熟成」などの表示を行う場合は、納品書、仕様書、仕入伝票、製造工程表、配合表など、表示内容を確認できる資料を保管します。仕入れや製造方法が変わったときは、メニュー担当者へ速やかに情報を共有する仕組みも必要です。消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」

価格表示ミスを防ぐ7ステップ

  1. 表示媒体を一覧化する
    紙、看板、Web、SNS、予約ページ、注文端末、POS、デリバリーなどを列挙します。
  2. 商品マスターを一元化する
    商品名、税込価格、税率、追加料金、販売期間、表示媒体を1つの表で管理します。
  3. 表示の根拠を確認する
    産地、銘柄、割引前価格、内容量、人数条件などを資料と照合します。
  4. 表示責任者が承認する
    調理担当やSNS担当が、それぞれ独自に商品名や価格を変更しない運用にします。
  5. 公開日時を決めて一斉更新する
    紙、デジタルメニュー、POSなどを可能な限り同じタイミングで切り替えます。
  6. 複数パターンでテスト会計する
    店内、持ち帰り、酒類、クーポン、サービス料などを組み合わせて確認します。
  7. 更新履歴を保存する
    旧メニュー、変更日、承認者、価格根拠、公開後の画面などを記録します。

商品マスターには、最低でも次の項目を設けます。

商品名 店内税込価格 持ち帰り税込価格 税区分 追加条件 表示媒体 更新日
商品A 入力 入力 10%/8% 人数・時間等 紙、QR、POS等 入力

原材料費や人件費の上昇を理由に価格を見直す場合は、表示修正だけでなく、告知時期や説明方法も決めておきましょう。価格決定と告知の進め方は、物価高時代の価格改定ガイド|飲食店が値上げしても客離れを防ぐ方法で解説しています。

レシートと簡易インボイスの確認

適格請求書発行事業者として登録している飲食店は、不特定多数の顧客に対する取引について、記載事項を一部省略した適格簡易請求書、いわゆる簡易インボイスを交付できます。

レシートを簡易インボイスとして交付する場合は、次の事項を確認します。

  • 店名または事業者名と登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容と、軽減税率対象品目である旨
  • 税率ごとに区分して合計した税込または税抜の対価額
  • 適用税率または税率ごとに区分した消費税額等

簡易インボイスでは宛先を省略でき、適用税率と消費税額等は、いずれか一方の記載で差し支えありません。国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」

店内飲食と持ち帰りが混在する会計、酒類を含む会計、値引きや返品を行う会計は、POS設定のミスが表面化しやすい組み合わせです。メニュー上の価格だけでなく、レシートの税率別集計まで確認してください。

開業前・価格改定時のチェックリスト

  • 消費者向けに表示する価格から実際の支払額を確認できる
  • 税抜価格を併記する場合も税込価格が明瞭である
  • 店内飲食とテイクアウトの価格差が分かる
  • 店内利用か持ち帰りかを確認する方法を決めている
  • 酒類、宅配、ケータリングの税区分を確認した
  • サービス料、席料、お通し代を注文前に確認できる
  • 「一人前」「2名から」などの人数条件を明記した
  • 「通常価格」「期間限定」の根拠と期間を記録した
  • 料理名、産地、銘柄と実際の仕入れが一致している
  • 紙、看板、Web、QR、POS、デリバリーの価格が一致している
  • 店内、持ち帰り、酒類、値引き、追加料金でテスト会計した
  • 登録店は簡易インボイスの記載事項を確認した

開業予定者は、価格表示の確認を営業開始直前まで残さず、プレオープン前に一度完了させましょう。ほかの最終確認項目は、飲食店開業直前1ヶ月でやるべき準備チェックリスト|漏れなく確実に開業するための最終確認も併用してください。

よくある質問

税込価格に「税込」と書かなくてもよいですか?

表示された金額が実際の支払総額であれば、「税込」の文字がなくても総額表示に該当します。ただし、税抜価格との併記などで誤解が生じる場合は、「税込価格」と明記したほうが分かりやすいでしょう。

免税事業者にも総額表示義務がありますか?

免税事業者は、消費税法上の総額表示義務の対象ではありません。ただし、別途消費税相当額を加算するような表示ではなく、消費者が実際に支払う価格を表示することが適正とされています。財務省「消費税における『総額表示方式』の概要」

店内飲食とテイクアウトの両方の価格表示が必要ですか?

必ず両方を表示しなければならないわけではありません。ただし、片方だけを表示する場合は、もう片方が別価格になることを目立つ場所で明瞭に示す必要があります。消費者の分かりやすさを優先するなら、両方の税込価格を併記する方法が適しています。

店内飲食とテイクアウトを同じ税込価格にできますか?

できます。ただし、税込価格が同じでも適用税率は異なります。課税事業者は、POSや帳簿で店内10%、持ち帰り8%を正しく区分してください。酒類は持ち帰りでも10%です。

QRメニューだけ直せば紙メニューは旧価格のままでもよいですか?

避けるべきです。顧客が閲覧できる旧価格が残ると、どの価格が適用されるのか判断できません。すぐに交換できない看板などには、目立つ訂正表示を行い、可能な限り早く差し替えてください。

サービス料はメニューの最後に小さく書けば十分ですか?

一律には判断できません。実務上は、メニュー冒頭、対象商品の近く、予約画面、注文端末など、注文確定前に自然に確認できる場所へ、金額または計算方法と適用条件を表示してください。

まとめ

飲食店のメニュー価格表示では、税込価格を書くだけでなく、店内飲食とテイクアウトの税区分、追加料金、割引条件、料理名の根拠、各媒体の整合性まで確認する必要があります。

実務では、商品ごとの価格、税率、適用条件、表示媒体をまとめた「価格表示マスター」を作り、紙メニュー、看板、Web、注文システム、POSを一斉に更新する運用が有効です。更新後は店内、持ち帰り、酒類、値引き、追加料金を組み合わせてテスト会計を行いましょう。

価格表示は単なるメニューデザインではなく、税務、会計、接客、販促をつなぐ経営管理です。開業前と価格改定時の定例業務として仕組み化してください。

参考資料

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