導入|飲食店の開業で「居抜き物件」は本当に得か?
物件探しの中でよく目にする「居抜き可」「設備付き」。
通常のスケルトン物件と違い、初期投資が抑えられることで人気の居抜き物件ですが、実は落とし穴も多く、「得したつもりが高くついた…」という事例も少なくありません。
本記事では、居抜き物件とスケルトン物件の違いを明確化し、メリット・デメリットを徹底比較。さらに、契約・改装・撤退時の注意点や活用ツールも含めて解説します。
居抜き物件とは?|定義とスケルトンとの違い
◉ 居抜き物件の定義
- 前テナントの内装・厨房機器・什器などが残っている状態
- 一部リース品がそのまま残っていることもある
◉ スケルトン物件との違い
項目 | 居抜き物件 | スケルトン物件 |
---|---|---|
設備 | 残っている | 全撤去(コンクリ打ち状態) |
初期費用 | 安い | 高い |
自由度 | 低め | 高い |
工期 | 短い | 長い |
修繕責任 | 引き継ぎがち | 原則すべて自分で施工 |
メリット①:初期費用を大幅に抑えられる
- 厨房設備や空調、内装工事を省略できる
- 電気・水道・ガス工事も不要なケースあり
- 特に小規模店舗(10〜15坪)では初期コスト差が数百万円に
▼実例:スケルトン vs 居抜き(15坪)
内容 | スケルトン | 居抜き |
---|---|---|
内装費 | 約250万円 | 約50万円 |
厨房設備 | 約200万円 | 既存設備0円(補修のみ) |
工事期間 | 約2ヶ月 | 約2週間 |
合計初期費用 | 約600万円 | 約100〜200万円 |
メリット②:開業までのスピードが早い
- 設備が整っていれば即営業許可申請が可能
- 融資審査期間中に準備が進められる
- 「競合がまだいないエリアで一気に出す」スピード戦略に有効
メリット③:立地や物件自体が“実績あり”の可能性
- 「同じ場所で5年営業していた」などの信頼性
- 商圏調査の手間が減りやすい
- 以前の顧客が再来店することも
メリット④:厨房レイアウト・導線が参考になる
- 専門家でなくても導線や配管レイアウトを活用できる
- 「最低限使える状態」からカスタマイズすればコスト減
デメリット①:残された設備の不具合リスク
- 実は壊れていた、漏電していた、錆びていた…
- 補修・修理にかえって費用がかかるケースも多い
▼チェックポイント例
- ガス機器の型番・年式を確認(10年超なら要注意)
- フードダクトに油溜まりがないか?
- リース残債の有無は?(残っていると引き継ぎ義務)
デメリット②:自由な内装・業態変更がしにくい
- 壁紙・什器の統一感が出せない
- 業態変更(例:中華 → フレンチ)は難易度が高い
- 元のコンセプトが残りすぎるとブランド構築に影響
デメリット③:保証金や譲渡費が不透明
- 居抜き物件には**“居抜き譲渡料”**が発生する場合がある(50万〜300万円)
- 家主との交渉ではなく元テナントとの個別交渉となりがち
- 契約形態が「二重契約(サブリース)」になっていることも
デメリット④:撤退時に“原状回復トラブル”が発生しやすい
- 「元からあった設備なのに撤去を求められた」
- 「どこまで戻せばいいかわからない」
- 契約時に写真付きで原状確認・復旧条件を明記するのが重要
どんな飲食店に居抜き物件が向いている?
店舗形態 | 居抜き向き? | 理由 |
---|---|---|
小規模カフェ | ◎ | 小投資で開業可能。設備流用しやすい |
テイクアウト専門 | ◎ | 最低限の設備で営業可能 |
高級レストラン | △ | 内装・演出重視で自由度必要 |
焼肉・中華 | △〜× | 排煙・ガスなど設備トラブル多発 |
ゴーストキッチン型 | ◎ | 厨房だけでOK。省スペースで有利 |
居抜き物件探しに使えるツール・サービス
- 店舗物件.info(https://www.tenpobukken.info/)
→ 全国の居抜き物件に特化したポータル - 飲食店ドットコム(https://www.inshokuten.com/)
→ 譲渡情報付きの専門検索サイト。仲介者とのマッチングも可 - ラクテンチ(https://www.rakutenchi.jp/)
→ 賃貸+リース付き居抜き物件多数。関東圏中心
よくある質問(FAQ)
Q. 居抜きとスケルトン、どっちが安い?
A. 初期費用は居抜きが圧倒的に安いです。 ただし長期的に見て「自由度の低さ」「故障リスク」によるコストがかかることも。
Q. トラブルになりやすいポイントは?
A. 譲渡契約・原状回復・リース品引き継ぎの3点です。契約時に必ず第三者(仲介業者・行政書士)にチェックしてもらうことをおすすめします。
Q. 居抜き物件の審査は通りやすい?
A. 家主側は“すぐ使える=すぐ営業”を好むため、実はスムーズに進むケースも多いです。
まとめ|“安く開業”は“安く続けられる”とは限らない
居抜き物件は、飲食店開業の初期コストを大幅に下げる強力な選択肢です。
しかし、設備トラブル・契約の不透明さ・原状回復問題などの**“見えないリスク”**を正しく理解していないと、かえって高くつくこともあります。
重要なのは、「なぜ安いのか」「どこが引き継がれるのか」を明確に把握すること。
契約書と現地確認をしっかり行い、“安さ”の裏にあるコストとリスクを見極めましょう。
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