結論からいうと、飲食店が高校生アルバイトを雇うときは、「高校生かどうか」ではなく、勤務日時点で満18歳未満かを基準に管理します。満18歳未満のスタッフには、年齢証明書の備付け、原則として午後10時以降の勤務禁止、36協定による時間外・法定休日労働の禁止、危険有害業務の制限など、成人スタッフとは異なるルールが適用されます。
飲食店で特に起こりやすいのが、「シフトは午後10時までだが、片付けで午後10時を過ぎた」「36協定があるので17歳に残業を頼んだ」「親だけが雇用契約書に署名した」「重量を確認せず米袋やビール樽を運ばせた」といった運用です。本人や保護者が同意していても、労働基準法上の制限を外すことはできません。
本記事は、2026年10月19日時点で確認できる厚生労働省の2026年7月資料「高校生等のアルバイトに関する労働基準法等の基礎知識」、同年4月版の事業主向け資料、労働基準法および年少者労働基準規則を基に、採用からシフト作成、業務分担、記録管理までを飲食店向けに整理します。出典:厚生労働省「高校生等のアルバイトに関する労働基準法等の基礎知識(令和8年7月)」
飲食店の高校生雇用は「学年」ではなく年齢で判断する
「高校生」と、労働基準法上の「年少者」は同じ意味ではありません。労働基準法で特別な保護の対象となる年少者は、満18歳未満の人です。
| 本人の状況 | 飲食店での基本的な扱い |
|---|---|
| 15歳になった後、最初の3月31日が終わる前 | 児童に該当。飲食店の業務には使用できない |
| 上記の3月31日終了後から満18歳未満 | 雇用できるが、年少者の特別ルールが適用される |
| 満18歳以上の高校生 | 労働基準法上は年少者ではない。学校規則や契約条件は別途確認する |
| 高校に通っていない17歳 | 年少者の特別ルールが適用される |
労働基準法では、15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、原則として児童を使用できません。一定の非工業的業種では労働基準監督署長の許可を受ける例外がありますが、年少者労働基準規則第9条は、旅館、料理店、飲食店などの業務について許可してはならないと定めています。したがって、中学生をホールや厨房の通常業務で働かせることはできません。出典:厚生労働省「労働基準法」第56条、出典:厚生労働省「年少者労働基準規則」第9条
一方、高校在学中でも満18歳になれば、労働基準法上の年少者規制は原則として外れます。卒業日ではなく、生年月日で管理してください。
満18歳未満を雇うときに守る7つのルール
1.年齢証明書を事業場に備え付ける
満18歳未満のスタッフを使用する事業場には、年齢を証明する公的書面を備え付ける義務があります。実務では、氏名と生年月日が証明された「住民票記載事項証明書」を提出してもらう方法が適切です。戸籍謄本や家族全員が記載された住民票の写しを一律に集める必要はありません。出典:厚生労働省「労働者名簿等の記載について」
学生証などを面接時の本人確認に使うことはあっても、それだけで労働基準法第57条の備付義務を満たすとは限りません。採用チェックリストに「住民票記載事項証明書の受領」を入れ、店長が生年月日を見ただけで手続きを終えないようにしましょう。
2.労働契約は本人と締結し、親権者の同意を確認する
親権者や後見人が、本人に代わって労働契約を結ぶことは禁止されています。雇用契約書には、働く本人が署名します。満18歳未満の契約については、民法上の法定代理人の同意も確認し、本人が契約当事者、親権者等は同意者という形にしてください。証拠を残すため、雇用契約書とは別に親権者同意書を取得する運用が実務的です。出典:厚生労働省「未成年者を雇用する場合の注意点」
一般の満18歳未満の高校生について、親権者同意書を事業場に備え付けることが労働基準法上、一律に義務付けられているわけではありません。法律上の備付義務が明記されているのは、労働基準法第56条第2項の許可を受けて児童を使用する場合です。ただし、飲食店では同項の許可を受けられないため、この例外を通常の高校生雇用に使うことはできません。
労働条件は口頭だけで済ませず、本人へ書面等で明示してください。現在の明示事項は、飲食店 労働条件通知書 2026年10月改正|パート・アルバイト雇用の対応チェックリストで確認できます。
3.午後10時から翌午前5時までは原則勤務させない
満18歳未満の年少者は、原則として午後10時から翌日午前5時まで勤務させられません。本人や保護者の希望があっても、通常の飲食店が同意だけで解除できる制限ではありません。法令には交替制などの限定的な例外がありますが、一般的な飲食店の繁忙対策として自由に使えるものではありません。出典:厚生労働省「労働基準法」第61条
勤務時間には、接客や調理だけでなく、店の明示または黙示の指示で行うレジ締め、清掃、所定の制服への着替え、翌日の準備、参加が義務付けられたミーティングなども含まれ得ます。打刻後に片付けを続けさせることはできません。出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
法律上の禁止時間は午後10時からですが、店舗ルールとして終業を午後9時30分までにするなど、引継ぎや着替えを含めても午後10時を超えない余裕を設けると安全です。午後9時30分は法定時刻ではなく、違反防止のための運用例です。
4.36協定があっても法定時間外・法定休日労働はさせない
満18歳未満には36協定を適用して、法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働をさせることはできません。繁忙日、予約の集中、欠勤者の発生といった事情があっても、成人スタッフと同じ感覚で残業を依頼しないようにします。
また、常時10人未満の飲食店などに認められる週44時間の特例も、満18歳未満には適用できません。原則は1日8時間、週40時間以内です。なお、店が定めた所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる勤務まで一律に禁止されるわけではありませんが、労働契約や確定済みシフトを一方的に変更してよいという意味ではありません。出典:厚生労働省「労働基準法」第60条
年少者には、週40時間以内で一方の日を4時間以内に短縮して他の日を10時間まで延長する方法など、法律上の例外的な時間配分があります。しかし要件が複雑なため、小規模店が独自判断で「夏休みだから1日10時間」「変形労働時間制だから週40時間を超えてよい」と処理するのは避け、必要な場合は労働基準監督署または社会保険労務士へ確認してください。
5.6時間を超える勤務には45分以上の休憩を与える
高校生アルバイトにも、一般の従業員と同じ休憩ルールが適用されます。実労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。通常のシフトは、年少者の法定労働時間である1日8時間以内を前提に設計してください。
休憩中も電話対応、来客対応、洗い場の監視などを指示している場合、その時間は休憩とは認められない可能性があります。交替休憩や手待時間の扱いは、飲食店 休憩時間ルール【2026年版】|6時間・8時間の基準と手待時間・交替休憩も参照してください。
6.危険有害業務と重量物の制限を業務表へ反映する
満18歳未満には、運転中の機械や動力伝導装置の危険部分の清掃・点検・修理、一定重量以上の重量物の取扱い、有害物や危険物を扱う業務などをさせられません。飲食店では、スライサーやミキサーを動かしたまま行う清掃・詰まり除去、重量のある米袋・ビール樽・廃棄物容器の運搬などに注意が必要です。出典:厚生労働省「労働基準法」第62条、出典:厚生労働省「年少者労働基準規則」第7条・第8条
| 年齢・性別 | 断続作業で禁止となる重量 | 継続作業で禁止となる重量 |
|---|---|---|
| 16歳未満・女性 | 12kg以上 | 8kg以上 |
| 16歳未満・男性 | 15kg以上 | 10kg以上 |
| 16歳以上18歳未満・女性 | 25kg以上 | 15kg以上 |
| 16歳以上18歳未満・男性 | 30kg以上 | 20kg以上 |
表の重量未満であれば必ず安全という意味ではありません。床の濡れ、階段、容器の持ちにくさ、移動距離によって危険性は変わります。年齢にかかわらず、台車、小分け、二人運搬を基本にしてください。
電源を切れば、すべての機械清掃を高校生に担当させてよいとも限りません。刃の露出や誤作動の危険がある機器は、主電源の遮断、プラグ管理、再起動防止の手順を定め、店舗ルールとして成人スタッフだけが分解・清掃する方法が現実的です。
7.酒席での接客や遊興的な業務を担当させない
年少者労働基準規則では、「酒席に侍する業務」と、バー、キャバレー、クラブなどの特殊の遊興的接客業における業務が禁止されています。出典:厚生労働省「年少者労働基準規則」第8条
酒類を販売する飲食店で働くことや、通常の注文受付・料理提供が直ちにすべて禁止されるわけではありません。一方、客のそばに付き続け、会話や盛り上げ、飲酒の相手などをする業務は区別する必要があります。居酒屋、宴会場、コンセプト型店舗などで境界が不明確な場合は、採用前に具体的な接客内容を示して、管轄の労働基準監督署へ確認してください。
午後10時超えを防ぐ高校生シフトの作り方
法律を店長の注意力だけで守ろうとすると、繁忙時に抜けが生じます。勤怠システムやシフト表に生年月日を登録し、満18歳未満の勤務を制限する仕組みにしてください。
| 管理項目 | 店舗ルールの例 |
|---|---|
| 年齢フラグ | 生年月日から「18歳未満」を自動表示する |
| 終業時刻 | 原則21時30分までとし、22時閉店日の締め作業には入れない |
| 延長操作 | 満18歳未満は22時以降へ延長できない設定にする |
| 実労働時間 | 6時間超で休憩不足の警告を出す |
| 業務区分 | 重量物、機械清掃、酒席接客などの担当可否を一覧化する |
| 18歳到達時 | 自動変更だけにせず、学校規則や契約条件も確認する |
例えば午後5時から午後9時30分までのシフトなら、着替えや引継ぎを含めても午後10時を超えるリスクを抑えられます。反対に午後6時から午後10時までのシフトは、来店客の滞在、レジ差異、清掃の遅れによって違反が起きやすいため、満18歳未満には避けるのが安全です。
満18歳になれば労働基準法第61条の年少者規制は原則として外れますが、高校在学中であれば、学校のアルバイト規則、本人との契約、帰宅手段、翌日の授業への影響なども確認してください。午後10時以降の勤務を割り当てる場合は、深夜割増賃金も必要です。
採用から初出勤までの実務手順
手順1.求人票に深夜勤務の時間帯と年齢制限の理由を書く
深夜勤務を含む求人を18歳以上に限定する場合は、「22時以降の勤務があるため18歳以上」のように、勤務時間帯と法令上の理由を明記します。単に「高校生不可」とだけ記載するのではなく、業務との関係を示してください。出典:厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止に係るQ&A」
手順2.面接で年齢と勤務可能時間を確認する
- 生年月日
- 学校のアルバイト許可や勤務時間の制限
- 親権者の同意状況
- 通学時間と安全な帰宅手段
- 定期試験や学校行事の時期
- 担当予定業務について本人が申し出たい配慮事項
学校の許可証は、通常の高校生アルバイトについて全国一律に定められた法定書類ではありません。ただし、校則で許可制とされている場合があります。必要な手続きがあるかを本人に確認してもらい、採用後のトラブルを防ぎましょう。
手順3.必要書類を本人へ交付し、提出を依頼する
- 労働条件通知書・雇用契約書
- 親権者同意書
- 住民票記載事項証明書
- 銀行振込を利用する場合の本人名義口座の情報と本人の同意
- 緊急連絡先
- 学校指定の許可書がある場合はその書類
賃金は本人へ直接支払うのが原則であり、未成年者の親が代わって受け取ることはできません。銀行振込を利用する場合は、本人の同意を得て、本人が指定する本人名義の口座へ振り込みます。
手順4.高校生用の業務分担表を作る
「ホール担当」「厨房担当」という大きな区分だけでは、危険業務を防げません。作業単位で担当可否を決めてください。
| 業務 | 基本方針 |
|---|---|
| 案内、注文受付、料理提供、レジ | 酒席に侍する業務などに該当しない範囲で担当させる |
| 食器洗浄、通常の店内整理 | 洗剤、割れ物、滑り、熱湯の危険を教育して担当範囲を決める |
| 包丁を使う仕込み | 年少者という理由だけで一律禁止ではないが、教育後に作業を限定する |
| フライヤー、熱湯、オーブン周辺 | 高熱物体や著しく暑熱な場所に当たる作業は担当させない。設備ごとにリスクを評価する |
| 運転中の機械清掃・詰まり除去 | 不可 |
| 米袋、樽、廃棄物容器の運搬 | 法定重量を確認し、台車、小分け、成人による運搬を優先する |
| 閉店後のレジ締め・清掃 | 午後10時を超える可能性がある場合は担当させない |
手順5.安全衛生教育を行い、記録を残す
アルバイトであっても、雇入れ時には従事する業務に関する安全衛生教育が必要です。厨房の濡れた床、包丁、火気、熱湯、洗剤、食器破損、重量物、機械停止手順、やけどや切創が起きた場合の報告先などを、実際の設備を使って教えます。
教育項目と記録様式は、飲食店 雇入れ時安全衛生教育【2026年版】|アルバイト初日の8項目・実施記録を活用してください。労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの整備は、飲食店 法定三帳簿【2026年版】|労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作り方と保存期間で確認できます。
飲食店で起こりやすい違反パターンと修正方法
| よくある運用 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 17歳を午後10時までシフトに入れる | 着替えや片付けで午後10時を超えやすい | 余裕を持った終業時刻にし、引継ぎ担当を決める |
| 本人と親が了承したので午後10時30分まで働かせる | 同意だけでは深夜業制限を解除できない | 午後10時前に成人スタッフへ交代する |
| 36協定があるため17歳に法定時間外労働を頼む | 36協定を年少者へ適用できない | 満18歳未満を時間外・法定休日労働の要員から除外する |
| 小規模飲食店なので週44時間まで働かせる | 週44時間特例は満18歳未満に適用できない | 原則として週40時間以内で管理する |
| 親だけが雇用契約書へ署名する | 親が本人に代わって労働契約を結ぶことは禁止されている | 本人が契約し、親権者は同意書へ署名する |
| 年齢は学生証を見て確認しただけ | 事業場に法令上の年齢証明書が備え付けられていない | 住民票記載事項証明書を提出してもらう |
| 先に打刻させてから清掃を続けさせる | 無記録労働となり、午後10時以降の勤務にもつながる | すべての作業終了後に打刻させ、満18歳未満は早い時間帯へ変更する |
深夜業や危険有害業務の規定に違反した場合、労働基準法第119条により、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。最低年齢に関する第56条違反は、同法第118条により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。年齢証明書の備付けに関する第57条違反にも、同法第120条の罰則があります。出典:厚生労働省「労働基準法」第118条~第120条
違反を店長個人の注意不足として処理せず、シフトシステム、採用書類、業務分担表、教育記録まで見直すことが再発防止につながります。
飲食店の高校生アルバイト雇用に関するFAQ
Q.17歳でも保護者が許可すれば午後10時30分まで働けますか?
通常の飲食店ではできません。本人や保護者の同意だけで、午後10時から翌午前5時までの深夜業制限を外すことはできません。交替制などの法定例外はありますが、一般的な閉店作業や繁忙対策として自由に利用できる制度ではありません。
Q.18歳になった高校生は午後10時以降も勤務できますか?
労働基準法第61条の年少者規制は、満18歳になった時点で原則として適用外になります。ただし、学校規則、本人との労働契約、帰宅手段、健康面への配慮は別途必要です。午後10時から翌午前5時までの労働には、深夜割増賃金を支払います。
Q.高校生を居酒屋で雇うこと自体が禁止されていますか?
店舗の名称が居酒屋であることだけで、満18歳未満を一律に雇用できないわけではありません。ただし、午後10時以降の勤務、酒席に侍する業務、特殊の遊興的接客業における業務は禁止されています。通常の注文受付や料理提供との区別が曖昧な業態は、事前に労働基準監督署へ確認してください。
Q.17歳に20kgの米袋を運ばせてもよいですか?
年齢、性別、断続作業か継続作業かによって結論が異なります。例えば、16歳以上18歳未満の女性に、継続して15kg以上の重量物を取り扱わせる業務は禁止対象です。男性でも、16歳以上18歳未満に継続して20kg以上を扱わせる業務は禁止されます。断続作業の基準は別です。法定重量未満でも、小分けや台車を優先してください。
Q.高校生の学校許可証は法律上必須ですか?
通常の高校生アルバイトについて、学校許可証を事業場に備え付ける全国一律の労働基準法上の義務はありません。ただし、学校が許可制にしている場合があります。校則を確認してもらい、必要な手続きを終えてから勤務を始めるのが適切です。
Q.高校生にも有給休暇や労災保険は適用されますか?
適用されます。高校生アルバイトでも、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤するなどの要件を満たせば、所定労働日数に応じた年次有給休暇が発生します。業務中や通勤中の負傷などは、アルバイトであっても労災保険の対象になり得ます。
まとめ:年齢確認とシフト制限を採用時に仕組み化する
飲食店が高校生アルバイトを安全に雇うための要点は、次の7つです。
- 高校生という属性ではなく、生年月日で満18歳未満かを判定する
- 住民票記載事項証明書などの年齢証明書を事業場に備える
- 労働契約は本人と締結し、満18歳未満は親権者の同意を確認する
- 午後10時以降に、片付けや着替えを含む労働をさせない
- 36協定や週44時間特例を年少者へ適用しない
- 重量物、運転中の機械清掃、酒席接客などを業務分担から外す
- 安全衛生教育と実際の始業・終業時刻の記録を残す
最も重要なのは、「店長が気を付ける」だけで終わらせないことです。年齢フラグ、余裕を持った終業時刻、業務可否表、必要書類チェックリストを採用時から設定すれば、繁忙時の違反を防ぎやすくなります。判断に迷う仕事内容や勤務形態がある場合は、実際のシフト表、設備、作業内容を用意して、管轄の労働基準監督署へ確認してください。

