導入|「備品」は飲食店経営の土台
開業前に「何が必要か」を把握するのは、飲食店の成否を分ける重要なステップです。物件やメニューは決まっていても、実際の営業に必要な“備品類”を見落としているケースは少なくありません。
「営業直前で慌てて買い出しに走った」
「予算を組んでいなかったせいで資金繰りが狂った」
「開業当日に“アレがない!”と焦った」
…そんなトラブルを避けるためにも、網羅的な備品リストと費用の目安を押さえておきましょう。
本記事では、業態ごとの違いや中古・リースの選び方も含めて、「必要な備品」「優先順位」「費用感」「AIを使った備品管理法」まで徹底解説します。
背景|備品抜けは“経営リスク”に直結する
飲食店開業の初期投資には、内装工事や厨房機器など目立つ大きな出費が多く、つい「小さな備品」は後回しになりがちです。
しかし実際には、
- 備品購入だけで50〜150万円以上かかることも多い
- 買い忘れがあると営業開始が遅れる
- 品質や在庫が安定しないとスタッフの業務効率が下がる
など、営業現場に直接影響を与える部分でもあります。
さらに、備品の仕入れは現金支出が多く、資金繰りに直結する項目でもあるため、あらかじめリスト化しておくことは経営管理の観点でも重要です。
飲食店の備品リスト【完全版】
ここでは、以下のカテゴリに分けて、飲食店開業時に必要な備品を漏れなくリストアップします。
- 【1】厨房備品
- 【2】ホール備品
- 【3】事務・衛生備品
- 【4】販促・ブランディング関連備品
- 【5】季節・防災備品
【1】厨房備品リストと費用目安
項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
包丁・まな板 | 各種用途別に複数必要 | 約5,000〜30,000円 |
鍋・フライパン類 | 業務用に耐えるもの | 約10,000〜50,000円 |
ボウル・ざる・バット | 大小複数必要 | 約3,000〜15,000円 |
計量器具 | スケール・軽量カップなど | 約5,000〜10,000円 |
キッチンタイマー・温度計 | 衛生管理に必須 | 約2,000〜10,000円 |
包材・調味料容器 | 業態に応じて多数 | 約3,000〜10,000円 |
タッパー・保存容器 | 仕込み・冷蔵用に多数 | 約10,000〜30,000円 |
合計目安:50,000〜150,000円程度
✅厨房備品の購入先は「飲食専門の業務用サイト(ex:テンポスバスターズ)」がコスパ良。
✅初期は中古やアウトレット品でもOK。買い替え前提で整備。
※厨房機器本体(冷蔵庫・ガスコンロなど)は別記事【厨房レイアウトの基本と注意点】で解説しています。
【2】ホール備品リストと費用目安(続き)
項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
テーブル・椅子 | 店舗面積・客席数に応じて | 100,000〜300,000円 |
おしぼりケース・箸立て | 各テーブル分必要 | 5,000〜20,000円 |
卓上メニュー立て | デザインにこだわるなら木製もあり | 5,000〜15,000円 |
呼び出しベル・チャイム | ファミリー層が多い店におすすめ | 10,000〜50,000円 |
レジ横備品(伝票ホルダー、紙類) | 日々消耗する備品 | 10,000〜30,000円 |
伝票・レジロール紙 | 会計回数によって大量に消費 | 5,000〜20,000円 |
会計トレイ・釣り銭トレー | 2セット以上あると安心 | 2,000〜5,000円 |
合計目安:150,000〜400,000円程度
✅ホールは“世界観”に直結するため、ブランディング観点でデザイン重視もおすすめです(特にSNS映えを狙うなら)。
【3】事務・衛生備品リストと費用目安
項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
POSレジ/タブレット | Airレジやスマレジなどが人気 | 50,000〜150,000円 |
タイムカード・勤怠表 | 人数によって形式を選定 | 5,000〜15,000円 |
清掃用品(モップ・バケツ等) | 開業前後で複数必要 | 10,000〜30,000円 |
ゴミ箱(厨房用・ホール用) | サイズ・衛生性を考慮 | 5,000〜15,000円 |
ゴミ袋・ラップ・アルミ | 日々使う消耗品 | 5,000〜10,000円 |
食器洗剤・除菌グッズ | HACCP対応の指定品もあり | 5,000〜10,000円 |
掲示物(営業時間・注意書き) | 店頭と店内両方に設置 | 2,000〜5,000円 |
合計目安:100,000〜250,000円程度
✅衛生備品は、保健所の指導基準を満たしているか事前確認が必須です。
【4】販促・ブランディング関連備品
項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
メニューブック・看板 | 初期は自作+後日プロ化でもOK | 10,000〜50,000円 |
スタンプカード・クーポン類 | リピーター育成に必須 | 5,000〜20,000円 |
チラシ・ポスター | 地域によって反響あり | 10,000〜50,000円 |
SNS用撮影アイテム | ライト・背景布など | 5,000〜10,000円 |
サイネージ・POP立て | タブレット型も人気 | 10,000〜30,000円 |
合計目安:50,000〜150,000円程度
✅ブランディング設計が弱いと集客が鈍化します。詳しくはブランディングの実践法も参照。
【5】季節用品・防災備品
項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
扇風機・暖房補助機器 | 夏冬で切替式の導入もあり | 10,000〜50,000円 |
防災グッズ・簡易トイレ | 開業時に1式備えておく | 10,000〜30,000円 |
傘立て・案内札 | 雨の日の対応に必須 | 3,000〜10,000円 |
加湿器・空気清浄機 | 花粉・ウイルス対策にも有効 | 10,000〜30,000円 |
合計目安:30,000〜100,000円程度
備品コストを抑える3つの方法
1. 中古やアウトレット品を活用
テンポスバスターズ、メルカリ、業務用再生ショップなどで状態の良い中古品を選ぶだけでも、コストは1/2〜1/3程度に抑えられます。
2. 初期は「必要最低限」+「営業しながら追加」
すべてを最初から揃えようとせず、“仮営業”で実地テストを行い、必要に応じて買い足す方針が合理的です。
3. 備品管理もAIで効率化
在庫補充の管理やスタッフとの備品共有には、以下のようなAIツールが便利です:
- Stockr(業務備品の自動在庫管理)https://stockr.jp
- Notion AI + カンバン運用:買い出し・補充のタスク管理に活用
- ChatGPT連携ツール:備品チェックリスト作成や共有に利用
AI活用事例は、飲食店がこっそり始めているChatGPT活用術|予約対応からマニュアル整備までも参考に。
業態別・特有の備品も要注意
焼肉・鉄板業態
- 無煙ロースター周辺備品(吸煙カバー、吸気ファン)
- トング・網・鉄板など高温対応ツール
カフェ・スイーツ業態
- ラテアートツール、スケール、ケーキカバー
- テイクアウト用パッケージ類
居酒屋業態
- お通し皿・小鉢類が多い
- 一升瓶ラックや徳利セットなどの酒器類
ラーメン・中華業態
- 丼サイズの多様さ(小・並・大・特盛)
- 移し替えバットや火力対応鍋
備品の優先順位と揃え方ステップ
ステップ1:絶対に必要な備品だけを先に購入
まずは「営業に必須なもの」だけ購入して、**“お客様に迷惑をかけないレベル”**を確保。
ステップ2:テスト営業で足りないものを洗い出す
- 家族や友人を招いたプレオープンでテスト
- 現場で発見される「意外な抜け」に気づける
ステップ3:運用しながら適宜補充&入れ替え
- 価格帯・サイズ・使い勝手で買い直すこともある
- 導線改善や提供スピード改善にもつながる
よくある質問(FAQ)
Q. 全部でいくらくらいかかる?
A. 業態や規模にもよりますが、小規模店でも50万〜150万円前後を想定しておくと安心です。
Q. 中古でも問題ない?
A. 基本的にOKです。ただし、衛生品・火器類は新品推奨です。
Q. 開業してから備品が足りないと気づいたら?
A. すぐに買い足せるように、Amazonや業務用サイトのお気に入り登録・価格比較をしておくのがおすすめです。
まとめ|備品管理が“現場力”を支える
備品は単なるモノではなく、飲食店の現場オペレーションを支える武器です。
- 開業前にリスト化し、優先順位をつけて管理
- 無駄なくコストを抑えるには中古・リース・AI管理の併用
- 必要な備品は業態によって変わる
事前準備と計画性こそが、スムーズな開業・安定した運営につながります。
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