結論からいうと、飲食店の営業許可を更新するには、許可証に記載された有効期限までに、店舗所在地を管轄する保健所が指定する継続・更新手続きを完了する必要があります。
申請時期、必要書類、手数料、施設検査、オンライン対応は自治体によって異なります。「全国一律で満了日の何日前」と考えず、まず許可証を確認し、実務上は満了日の90日前を目安に保健所へ問い合わせると安全です。
- 最初にすること:営業許可証の有効期限と管轄保健所を確認する
- 申請時期:自治体の期限に従う。90日前は法定期限ではなく準備開始の目安
- 期限を過ぎた場合:当該許可が必要な営業を続けず、直ちに保健所へ相談する
有効期限後も営業を続ければ、無許可営業となります。横浜市西区は、期限後の申請を新規申請と同様に扱い、更新時の手数料減免を適用しないと案内しています。(出典:横浜市西区「食品関係営業許可申請(営業を継続する場合)」)
本記事では、2026年10月24日時点の法令と自治体の公式情報に基づき、飲食店営業許可の更新期限、必要書類、費用、施設検査、変更届との違い、期限切れ時の対応を解説します。
飲食店営業許可の更新で最初に確認すること
有効期限は営業許可証の記載が基準
食品衛生法第55条では、飲食店営業などの対象業種を営む場合、都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。また、許可には5年を下らない有効期間などの条件を付けることができます。(出典:e-Gov法令検索「食品衛生法」第55条)
「5年を下らない」とは、すべての営業許可が一律5年という意味ではありません。実際の許可期間と満了日は、手元の営業許可証で確認してください。許可証を紛失した場合は、自治体ごとに再交付や紛失届の手続きが異なるため、更新直前まで放置せず保健所へ連絡します。
自治体によって「更新」「継続」「切替」など呼び方が異なる
自治体の案内では、「更新申請」「継続申請」「期限満了に伴う切替」などの表現が使われます。いずれも、有効期限後も同じ施設で営業を続けるための手続きを指します。検索するときは「自治体名+食品営業許可+更新」だけでなく、「継続」「切替」でも確認してください。
営業許可と営業届出を混同しない
飲食店営業は原則として営業許可の対象であり、有効期限後も続けるには継続・更新手続きが必要です。一方、食品衛生法上の営業届出には有効期間がなく、更新手続きもありません。ただし、届出事項の変更や廃業時には届出が必要です。(出典:厚生労働省「営業届出制度の創設」)
同じ店舗で複数の許可を取得している場合や、許可営業と届出営業を併せて行っている場合があります。許可証、申請控え、食品衛生申請等システムの登録内容を照合し、業種ごとの満了日と手続きを一覧化しましょう。
営業許可の更新はいつまでに申請するのか
更新期限は自治体ごとに異なります。公式案内の例は次のとおりです。
| 自治体 | 案内されている申請時期 | 注意点 |
|---|---|---|
| 大阪市 | 有効期間満了の2週間前までを目安 | 最終的には満了日までに手続きを完了する |
| 鹿児島市 | 有効期間終了日の1か月前まで | 未更新で営業を続けると終了日後は無許可営業 |
| 広島市 | 満了月の1日から満了日の5日前まで | 継続申請後に施設検査を行う |
出典:大阪市「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」、鹿児島市「飲食店などのお店の営業許可を更新したい」、広島市「営業許可手続きの流れ」
このように、満了日の2週間前、1か月前、満了月内など運用が異なります。満了日だけでなく、閉庁日、手数料の納付期限、施設検査の日程も確認してください。
90日前から始める実務スケジュール
次の表は全国共通の法定期限ではなく、設備改修や書類不足による期限切れを防ぐための管理例です。
| 時期 | 実施すること | 主な担当者 |
|---|---|---|
| 満了90日前 | 許可証の期限、許可業種、管轄保健所、自治体の申請期限を確認する | 経営者・本部 |
| 満了60日前 | 許可時の図面と現状を照合し、改装、設備変更、営業者情報の変更を洗い出す | 店長・設備担当 |
| 満了30日前 | 申請書、許可証、図面、水質検査成績書など、保健所が指定した書類をそろえる | 申請担当者 |
| 自治体の指定期限まで | 申請と手数料納付を行い、施設検査や許可証交付の予定を確認する | 申請担当者 |
| 施設検査前 | 手洗い、冷蔵設備、給排水、防虫防鼠、HACCPの運用状況を点検する | 店長・食品衛生責任者 |
更新案内のはがきやメールだけに頼らない
自治体から電話、はがき、メールなどで案内される場合がありますが、案内が届かなかったことを理由に期限後も営業できるわけではありません。移転、担当者の退職、登録メールアドレスの変更などを想定し、店舗側で期限を管理してください。
厚生労働省の食品衛生申請等システムには、システム上の許可営業施設について、有効期限の90日前と30日前に登録メールアドレスへ自動通知する機能があります。ただし、登録情報やメールアドレスが正しく管理されていることが前提です。(出典:厚生労働省「食品衛生申請等システム操作マニュアル」)
多店舗経営では、店舗名、所在地、許可業種、許可番号、満了日、管轄保健所、申請担当者を本部の許可台帳で管理し、120日前・90日前・30日前の社内通知を設定すると引き継ぎ漏れを防ぎやすくなります。
飲食店営業許可の更新に必要な書類
必要書類は自治体と店舗の状況によって変わります。全国一律の固定リストと考えず、次の区分で確認してください。
| 区分 | 主な書類・確認物 |
|---|---|
| 基本書類 | 営業許可申請書、現在の営業許可証、申請手数料 |
| 自治体から指定された場合 | 施設の構造・設備を示す図面、食品衛生責任者の資格証明書、HACCPに沿った衛生管理計画や記録 |
| 対象の水を使用する場合 | 所定期間内に実施した水質検査成績書 |
| 申請事項に変更がある場合 | 変更届、変更後の図面、登記事項証明書など変更内容を確認できる書類 |
| 郵送交付などを希望する場合 | 郵送交付依頼書、返信用封筒やレターパックなど自治体指定のもの |
大阪市は、更新時の必要書類について、基本的には新規許可と同じものの、一部を省略できる場合があると案内しています。また、現在の許可証を持参し、食品衛生責任者、法人住所、代表者などに変更がある場合は、変更を確認できる書類を用意するよう求めています。(出典:大阪市「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」)
申請手数料は自治体と許可業種によって異なる
営業許可の更新手数料は全国一律ではありません。大阪市では、2026年4月7日時点で、固定店舗の飲食店営業について新規申請16,000円、更新申請12,800円としています。(出典:大阪市「食品衛生関係の申請手数料」)
他自治体では金額が異なり、改定されることもあります。過去の領収書や別の自治体の金額を予算に流用せず、申請年度の公式ページで確認してください。
水質検査成績書が必要になる水を正しく判定する
水質検査成績書が必要になるかは、単に「水道直結か受水槽か」だけでは判断できません。食品衛生法施行規則上、水道事業、専用水道、簡易専用水道によって供給される水以外の水を使用する場合は、申請時に水質検査結果が必要になります。代表例は井戸水や湧水です。(出典:厚生労働省「食品衛生法施行規則」)
一方、水道水を受水槽経由で使用していることだけを理由に、営業許可更新用の水質検査成績書が全国一律で必要になるわけではありません。受水槽の規模、建物の管理区分、自治体の条例や指導を確認してください。
対象となる店舗では、検査機関への依頼から成績書の発行まで日数がかかります。給水方式別の管理は、飲食店 水質検査【2026年版】|井戸水・受水槽・水道直結の頻度とPFAS対応も参照してください。
オンライン申請だけで更新が完了するとは限らない
厚生労働省の食品衛生申請等システムでは、営業許可の申請や営業届出をオンラインで行えます。利用時は、GビズIDまたは食品衛生申請等システムのアカウントを使用します。(出典:厚生労働省「食品衛生申請等システム」)
ただし、システムで整理番号が発行された時点は、申請情報の登録が終わり、保健所の確認待ちになった段階です。営業許可申請は、システム上のステータスが「発行済」になった時点で手続き完了となります。(出典:食品衛生申請等システム「よくあるご質問」)
手数料の納付方法、施設検査、追加書類、許可証の受領方法は自治体によって異なります。オンライン申請後も、登録メールアドレスに届く差戻しや追加対応の通知を確認してください。
横浜市では、令和3年6月以降初めて更新する一定の申請について、先に営業施設の調査を終え、横浜市電子申請・届出システムから申請し、許可証の郵送交付を選択すれば、区役所へ来庁せずに手続きできると案内しています。一方、厚生労働省の食品衛生申請等システムから申請する方法では、来庁不要で完結するとは限りません。(出典:横浜市「食品営業許可のオンライン申請について」)
施設検査の有無と実施時期は自治体ごとに確認する
更新時に施設検査を行うか、どの段階で行うかは自治体によって異なります。広島市では、継続申請後に食品衛生監視員が施設検査を行い、施設基準への適合を確認してから新しい許可証を交付すると案内しています。(出典:広島市「営業許可手続きの流れ」)
検査が省略される場合でも、施設基準を満たさなくてよいという意味ではありません。設備交換や改装が必要になった場合に備え、次の項目を自主点検してください。
施設・設備のチェックリスト
- 従業者用の流水式手洗い設備が必要な場所にあり、正常に使用できる
- 手洗い水栓が、洗浄後の手指の再汚染を防げる構造になっている
- 手指の洗浄・消毒に必要な用品が補充されている
- 冷蔵・冷凍設備が正常に作動し、温度計で確認できる
- 必要な量の安全な水を供給できる
- 排水設備に漏れ、詰まり、逆流のおそれがない
- 窓、排水口、出入口などに必要な防虫・防鼠対策がある
- 洗浄剤や殺菌剤を食品、食器、容器包装と区分して保管している
- 廃棄物容器が清掃しやすく、汚液や臭気が漏れにくい
- 便所が作業場に汚染の影響を及ぼさず、専用の手洗い設備を備えている
- 許可申請時の図面と現在の厨房レイアウトに無届けの相違がない
国が示す施設基準には、再汚染を防止できる手洗い水栓、適切な給排水、必要な冷蔵・冷凍設備と温度計、防虫防鼠設備、薬剤の区分保管、廃棄物容器などが含まれます。ただし、具体的な施設基準は、厚生労働省令の基準を参酌して自治体が条例で定めるため、最終的には店舗所在地の基準を確認してください。(出典:厚生労働省「食品衛生法施行規則(施設基準)」)
HACCPの衛生管理計画と記録も確認する
- 現在のメニューと調理工程に合う衛生管理計画がある
- 冷蔵庫温度、加熱、清掃、従業員の健康状態などを決めた方法で確認している
- 確認結果と異常時の対応を記録している
- メニュー、設備、仕入先、調理工程の変更後に計画を見直している
- 従業員が手洗いと体調不良時の報告手順を理解している
鹿児島市では、更新手続き時の持参物として、HACCPに沿った衛生管理計画書と記録簿を案内しています。自治体によって確認方法は異なりますが、更新直前だけ書類を作るのではなく、日常的に運用することが必要です。(出典:鹿児島市「飲食店などのお店の営業許可を更新したい」)
未整備の場合は、飲食店 HACCP 衛生管理計画の作り方【2026年版】|3分類・記録・保存期間を参考に、実際のメニューと作業工程に合わせて整備してください。
更新前の変更は「変更届」「地位承継」「新規許可」を判定する
更新時によく問題になるのが、許可申請時の情報と現在の店舗が一致していないケースです。更新申請だけで処理できるとは限らないため、次のように整理します。
| 変更内容 | 基本的な考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 屋号の変更 | 変更届 | 許可証の提出や書換えが必要な場合がある |
| 同一法人の名称・本店所在地・代表者の変更 | 変更届 | 登記事項証明書などを求められる場合がある |
| 食品衛生責任者の変更 | 変更届 | 後任者の資格証明書を準備する |
| 厨房機器の配置や設備の変更 | 変更届または事前相談 | 変更後の図面が必要。規模によっては新規許可となる |
| 施設の移転・建て替え・大幅な改築 | 原則として新規許可 | 工事着手前に図面を示して相談する |
| 事業譲渡・相続・法人の合併や分割 | 要件を満たせば地位承継 | 原因ごとの承継届と証明書類が必要 |
| 承継に該当しない営業者の交代 | 新規許可となる可能性が高い | 名義だけを書き換えることはできない |
大阪市は、営業設備、営業者の住所・氏名、法人代表者、屋号、食品衛生責任者などの変更手続きを個別に案内しています。変更内容によって必要書類が異なるため、更新申請と同時に提出できるかを確認してください。(出典:大阪市「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」)
また、2023年12月13日以後の営業の事業譲渡では、要件を満たせば、譲受人は新規許可を取り直さずに許可営業者の地位を承継できます。個人事業から法人へ営業を移す場合も、実体のある事業譲渡と証明書類があれば対象になり得ます。契約や名義変更を先に進めず、譲渡前に保健所へ相談してください。(出典:厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されます」)
詳しい条件は、飲食店営業許可の事業譲渡・承継【2026年版】|地位承継の条件・必要書類・届出手順も確認してください。
営業許可が期限切れになったときの対応
期限切れに気づいたら、「数日なら更新扱いになる」と自己判断して営業を続けてはいけません。鹿児島市も、更新手続きをせずに営業を続けた場合、有効期間終了日以降は無許可営業になると明記しています。
- 当該許可が必要な営業を停止する
店内飲食だけでなく、同じ許可に基づくテイクアウトやデリバリーも含め、どの業務を停止すべきか保健所へ確認します。 - 許可証と過去の申請資料を用意する
許可番号、営業者名、施設所在地、許可業種、満了日、施設変更の有無を整理します。 - 管轄保健所へ直ちに連絡する
期限切れの日数、期限後に営業した事実の有無、設備や営業者の変更を正確に伝えます。 - 保健所の指示に従って申請する
自治体によっては新規申請扱いとなり、新規申請手数料、施設検査、図面などが必要です。 - 許可を確認してから営業を再開する
申請書を提出しただけでは再開せず、許可が発行され、営業できる状態になったことを確認します。
予約客がいる場合は、休業、日程変更、キャンセル、返金を案内します。期限切れを隠したり、申請日をさかのぼれると考えたりせず、事実を整理して行政の指示に従ってください。
飲食店営業許可の更新に関するFAQ
Q1. 更新案内が届かなければ手続きしなくてもよいですか?
いいえ。案内の有無にかかわらず、営業者が許可証の有効期限を管理し、期限内に手続きする必要があります。はがきやメールは補助的な通知と考えてください。
Q2. 90日前までに申請しなければなりませんか?
90日前は、本記事が推奨する準備開始の目安であり、全国一律の法定申請期限ではありません。実際の申請時期は自治体の案内に従います。
Q3. オンライン申請なら保健所へ行かずに済みますか?
自治体と申請方法によります。オンラインで入力できても、手数料納付、施設検査、許可証受領などで追加対応が必要な場合があります。
Q4. 許可証を紛失していても更新できますか?
再交付申請、紛失届、許可内容の証明など、自治体の指示に従います。現在の許可証を更新書類として求める自治体もあるため、紛失に気づいた時点で相談してください。
Q5. 食品衛生責任者が退職しています。更新だけ先にできますか?
食品衛生責任者の変更手続きと後任者の資格確認が必要です。後任者が未定の場合も自己判断で放置せず、更新申請前に保健所へ相談してください。
Q6. 更新直前に厨房を改装してもよいですか?
改装内容によって変更届または新規許可が必要です。厨房区画、手洗い、シンク、給排水、出入口などを変更する場合は、着工前に図面を示して相談しましょう。
Q7. 有効期限当日に申請すれば間に合いますか?
自治体が申請や納付の完了をどの時点で判断するかによります。満了日が閉庁日で、前開庁日までの手続きを求める自治体もあります。当日申請を前提にせず、自治体の目安より前に手続きを進めてください。
まとめ
飲食店営業許可の更新で最も重要なのは、許可証に記載された有効期限を営業者自身が管理し、自治体の指定期限までに手続きを完了することです。
90日前を目安に保健所へ確認し、必要書類、手数料、施設検査、オンライン申請の範囲を整理してください。井戸水等の水質検査、設備改修、図面修正が必要な場合は、直前の準備では間に合わないことがあります。
また、更新時には、許可時の図面と現状、食品衛生責任者、法人情報、厨房設備、HACCPに沿った衛生管理を見直しましょう。設備や営業者が変わっている場合は、更新だけでなく、変更届、地位承継、新規許可の判定が必要です。
すでに期限を過ぎている場合は、当該許可が必要な営業を続けず、直ちに管轄保健所へ連絡してください。本記事の自治体例だけで判断せず、店舗所在地の最新情報を最終確認することが不可欠です。

