飲食店 グリストラップ 清掃|毎日の手順・頻度・廃棄物処理マニュアル

飲食店厨房でグリストラップ清掃用具と回収容器を準備した状態
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結論からいうと、飲食店のグリストラップ(正式名称:グリース阻集器)は、業者へ数か月ごとに任せるだけでは管理できません。バスケットと浮上油脂を店舗で毎営業日清掃し、槽内のごみ・油脂を週次で除去したうえで、内部全体を定期清掃するのが基本です。

東京都下水道局の案内では、バスケットと油脂分は毎日1回、槽内のごみ・油脂は1週間に1回、トラップ内部は2〜3か月に1回の清掃が示されています。ただし、これは東京都の維持管理案内であり、全国一律の法定頻度ではありません。油脂の排出量、グリストラップの容量、製品仕様、自治体、建物管理者の基準に応じて頻度を調整してください。

清掃不足は悪臭や害虫だけでなく、排水管の詰まり、厨房への逆流、階下への漏水につながります。本記事では、開業前の設備確認、清掃手順、回収物の処理、産業廃棄物を委託する場合の契約、記録方法、あふれ・逆流時の初動まで解説します。

目次

飲食店のグリストラップ清掃頻度

まずは、次の頻度を運用の出発点にしてください。

頻度 清掃・確認箇所 作業内容
毎営業日 バスケット 食品くずや異物を回収し、網目の詰まりを除去する
毎営業日 水面 浮上した油脂をすくい取り、ふた周辺の付着油を拭き取る
週1回以上 槽内・隔板周辺 たまったごみや油脂を除去し、隔板や流出口部品を点検する
2〜3か月に1回を目安 内部全体 底部汚泥、壁面、隔板、流入口・流出口周辺を清掃し、破損を確認する
異常を確認したとき 排水系統 詰まり、逆流、水位上昇、悪臭、油脂流出の原因を調査する

根拠となる頻度は、東京都下水道局「飲食店・料理店のみなさま グリース阻集器を設置しなければなりません!!」で確認できます。

揚げ物、焼肉、ラーメン、洋食など油脂負荷の高い業態では、週次・定期清掃を前倒しする場合があります。業態名だけで決めず、浮上油脂の量、底部の残さ、排水速度、水位、臭気を記録し、自店の汚れ方に合わせてください。

開業前・物件契約前に確認する7項目

グリストラップの交換や移設には、床や排水管の工事が必要になる場合があります。物件契約前、遅くとも厨房設計の確定前に次の項目を確認しましょう。

  • 既設設備の容量、型式、仕様書、認定表示、施工図面が残っているか
  • 予定する調理内容、利用人数、排水量に対して容量が適切か
  • ふた、バスケット、隔板、流出口のトラップ管などに欠損がないか
  • ふたを十分に開け、バスケットを安全に取り出せる作業空間があるか
  • 冷蔵庫や棚を移動しなければ清掃できない配置になっていないか
  • 食器洗浄機などの高温排水がグリストラップへ流れ込む設計になっていないか
  • 清掃費、詰まり修理費、廃棄物処理費の負担者が賃貸借契約で明確か

設置義務や施工ルールは地域で異なります。例えば横浜市は、油脂類を多量に排出する店舗等に設置を義務づけ、日本阻集器工業会の認定品と横浜市排水設備指定工事店による施工を案内しています。出店地の下水道担当部署、指定工事店、建物管理者へ事前に確認してください。詳しくは、横浜市「グリーストラップの設置について」を参照してください。

厨房全体の配置を検討している場合は、開店後に後悔しない!初心者が飲食店で見落としがちな「厨房設計」5つの落とし穴と回避策【詳細版】もあわせて確認してください。

閉店後に行うグリストラップ清掃の手順

  1. 作業区域を確保する:床の水分や障害物を除去し、清掃中であることを周囲へ知らせます。
  2. 換気を行う:厨房の換気設備を運転します。強い腐敗臭がある場合は、顔を槽内へ近づけず、作業を中止して業者へ相談してください。
  3. 保護具を着ける:耐水性手袋、専用エプロン、滑りにくい靴を使用します。飛散のおそれがある作業では保護眼鏡も使用します。
  4. バスケットを取り外す:食品くずを水で押し流さず、専用の回収容器へ移します。
  5. 浮上油脂を回収する:ひしゃくやスクレーパーで静かにすくいます。油脂を細かく撹拌しないようにします。
  6. 槽内を確認する:週次清掃日には、たまったごみ・油脂を除去し、隔板、流入口、流出口を確認します。
  7. 部品を点検する:隔板の外れ、変形、欠損、流出口部品の緩みがないか確認します。
  8. ふたと周辺を清掃する:ふた裏、取っ手、床との境目に付着した油脂を除去します。
  9. 元の状態へ戻す:バスケット、隔板、流出口部品を正しい位置へ戻し、少量の水を流して排水状態を確認します。
  10. 記録する:油脂量、臭気、水位、排水速度、破損、回収物の処理方法、担当者名を記録します。

ひしゃく、ブラシ、バケツは清掃専用品とし、食品用器具と分けて保管してください。食品や食器を扱うシンクで清掃用具を洗わず、作業後は手袋を外して手洗いを行います。

内部全体の清掃について、小型設備で安全に作業できる場合は、手順を教育された担当者が実施できます。一方、大型槽、地下槽、バキューム回収が必要な設備、排水管内部、強い腐敗臭がある設備は専門業者へ依頼してください。槽内へ人が入る作業を通常の店舗清掃として行わせてはいけません。

やってはいけない清掃方法

  • 熱湯で油脂を溶かして流す:下流で冷えて固まり、排水管を詰まらせるおそれがあります。
  • 大量の水で押し流す:油脂が十分に分離されないまま流出しやすくなります。
  • 隔板や流出口部品を外したまま営業する:本来の油水分離機能を発揮できません。
  • ばっ気装置を自己判断で後付けする:油脂が撹拌され、排水管へ流出するおそれがあります。
  • 油脂を排水として流すタイプの処理剤に頼る:油脂を乳化・分散させただけで、下水へ流出させる製品があります。
  • 回収物を下水や雨水ますへ捨てる:排水管の詰まりや水質汚濁の原因になります。

東京都下水道局は、日々の清掃に加え、ばっ気装置等の後付け、油脂を排水として流すタイプの処理剤、高温排水、多量排水を避けるよう案内しています。詳しくは、東京都下水道局「飲食店のみなさまへお願い」を確認してください。

回収した油脂・汚泥・食品くずの処理方法

バスケット内の食品くずと、浮上油脂・底部汚泥を同じ扱いにしてはいけません。廃棄物の区分は、回収物の性状と有価物に該当するかどうかを踏まえて判断します。

回収物 基本的な区分 実務上の注意
バスケット内の食品くず 通常は事業系一般廃棄物 区市町村や建物指定の分別・収集ルールに従う
使用済み食用油 廃棄物であれば産業廃棄物の「廃油」 実態のある有償買取では有価物となる場合がある。買取条件や伝票を保存する
グリストラップの浮上油脂 産業廃棄物の「廃油」として扱うのが基本 下水や事業系一般ごみに混ぜず、所在地の担当部署と処理業者に確認する
底部の泥状物 性状に応じて産業廃棄物の「汚泥」 油分を含む場合は、汚泥と廃油の混合物として扱うことがある
油・水・固形物が混ざった回収物 性状に応じた混合廃棄物 外観だけで区分せず、許可業者と所管自治体に確認する

東京都環境局は、飲食店から出る食品残さを一般廃棄物とする一方、飲食店から排出される廃油も産業廃棄物になると案内しています。分類の考え方は、東京都環境局「よくある質問 基本編」で確認できます。

また、川崎市の排出事業者向け手引きは、全体として泥状のものを汚泥、廃油が残留する泥状物を汚泥と廃油の混合物として判断する例を示しています。グリストラップの回収物も、実際の性状を処理業者へ伝えて区分してください。

回収後は、漏れや悪臭が生じないふた付き専用容器へ入れ、食品や包装資材から離して保管します。保管方法についても、所在地の産業廃棄物担当部署と処理業者の指示に従ってください。

産業廃棄物として処理を委託する場合

  1. 回収物が廃油、汚泥、またはその混合物のどれに当たるか確認する
  2. 収集運搬業者と処分業者の許可証の写しを入手する
  3. 許可品目と許可地域が委託内容に合っているか確認する
  4. 収集運搬と処分について、法定事項を含む書面契約を結ぶ
  5. 引渡し時に紙マニフェストを交付するか、電子マニフェストへ登録する
  6. 運搬・処分・最終処分の終了を確認する
  7. 委託契約書や紙マニフェストの写しを法定期間保存する

産業廃棄物処理の委託契約は、清掃の発注書や請求書だけでは代用できません。東京都環境局は、法定事項を含む書面契約と、許可証などの添付を求めています。詳しくは、東京都環境局「委託契約書」を参照してください。

委託契約書は契約終了後5年間、紙マニフェストの保存対象となる写しも5年間の保存が必要です。紙マニフェストを交付した排出事業者は、前年度の交付状況を事業場ごとにまとめ、毎年6月30日までに都道府県知事等へ報告します。電子マニフェストでは、情報処理センターから行政へ報告されるため、同報告書の個別提出は不要です。詳細は、東京都環境局「マニフェストの交付」で確認してください。

清掃業者へ任せても、店舗の排出事業者責任はなくなりません。廃棄物処理法では、事業活動に伴って生じた廃棄物を事業者が自らの責任で適正に処理することを求めています。処理を委託した後も、適正処理を確認する責任が残ります。環境省「排出事業者責任の徹底について」を参照してください。

なお、グリストラップを清掃できる技術があることと、回収物を運搬・処分できる許可があることは別です。業者が回収物を持ち帰る契約では、清掃料金だけで比較せず、処理経路、許可証、契約書、マニフェストの運用まで確認してください。

清掃記録を店舗運営へ組み込む

厚生労働省は、小規模な飲食店にも、衛生管理計画と必要な手順書の準備、従業員への周知、実施状況の記録、記録の保存、定期的な振り返りを求めています。グリストラップ専用の全国一律様式はありませんが、設備清掃の手順として衛生管理計画へ組み込むと、作業漏れや異常を発見しやすくなります。

制度の詳細は、厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で確認できます。

最低限残す記録項目

  • 実施日、時刻、担当者名
  • バスケット清掃と浮上油脂回収の実施状況
  • 回収量の目安
  • 臭気、水位、排水速度の異常
  • 隔板、ふた、流出口部品の異常
  • 回収物の区分、保管場所、引渡し先
  • 異常時に行った処置と連絡先
  • 責任者による週次確認

記録は作業後に記入します。「気付いた人が行う」のではなく、閉店担当、週次確認者、業者手配者、代替担当者をシフト表や閉店チェック表に明記してください。

衛生記録をデジタル化したい場合は、飲食店 HACCP記録アプリ導入ガイド|厚生労働省公式アプリの設定・運用・CSV保存も参考にしてください。

悪臭・詰まり・逆流が起きたときの初動

次の兆候がある場合は、通常清掃だけで様子を見続けず、設備業者や建物管理者へ連絡します。

  • 清掃後も強い悪臭が続く
  • シンクの水が以前より遅く流れる
  • 排水時にゴボゴボという音がする
  • グリストラップの水位が通常より高い
  • 流出口側へ大量の油脂が移動している
  • 床排水口や別のシンクから水が上がる
  • ふたの周囲から排水があふれる

あふれ・逆流時の対応手順

  1. 該当系統につながるシンクや食器洗浄機などの使用を止める
  2. スタッフと来店客を汚染区域へ近づけない
  3. 露出していた食品、容器、調理器具への飛散状況を確認する
  4. あふれた範囲と設備の状態を写真で記録する
  5. 建物管理者、排水設備業者、清掃業者へ連絡する
  6. 原因を除去するまで大量の水や薬剤を流さない
  7. 汚水に触れた食品や安全性を確認できない食品を提供しない
  8. 汚染区域、器具、食器を十分に清掃・洗浄・消毒する
  9. 原因、対応、廃棄した食品、再発防止策を記録する

汚水が食品取扱区域へ広がった場合や、器具・食器・食品が汚染された場合は、自己判断で直ちに営業を再開せず、必要に応じて管轄保健所へ相談してください。厚生労働省も、食品営業施設が汚水等で浸水した場合は、食品の廃棄、施設・器具・食器の清掃、洗浄、消毒を行い、営業再開について保健所へ相談するよう案内しています。

共用排水管の詰まりや階下への漏水では、費用負担や工事範囲が問題になります。緊急連絡先、夜間対応、修理費用の負担区分は契約前に確認してください。詳しくは、テナント契約で失敗しない!飲食店開業時の賃貸契約チェックリストを参照してください。

油脂や食品残さの放置は、害虫の餌や発生源にもなります。排水周辺を含む防除計画については、飲食店 害虫対策マニュアル|ねずみ・昆虫の年2回以上の駆除・IPM・記録保存もあわせて確認してください。

飲食店のグリストラップ清掃に関するFAQ

Q1. グリストラップは毎日清掃する必要がありますか?

すべての部品について全国一律の法定頻度があるわけではありません。ただし、東京都下水道局はバスケットと油脂分を毎日1回清掃するよう案内しています。設備の能力を維持するため、毎営業日の清掃を基本にしてください。

Q2. 悪臭がなければ清掃回数を減らしてもよいですか?

悪臭は判断材料の一つにすぎません。臭いがなくても、底部汚泥の堆積や流出口側への油脂流出が進んでいる場合があります。回収量、水位、排水速度、隔板の状態を記録したうえで頻度を判断してください。

Q3. 油脂分解剤を使えば清掃は不要になりますか?

不要にはなりません。東京都下水道局は、グリースを乳化・分散させ、排水として流すタイプの処理剤を使用しないよう案内しています。製品を導入する場合は、所管下水道局と設備メーカーへ適否を確認してください。

Q4. 清掃業者へ依頼すれば廃棄物処理も任せられますか?

清掃業者が回収物を持ち帰る場合は、その業者または別の運搬・処分業者が対象品目と地域に対応する許可を持っているか確認します。清掃契約とは別に、産業廃棄物の書面契約とマニフェストが必要になる場合があります。

Q5. 居抜き物件のグリストラップをそのまま使えますか?

外見がきれいでも、容量不足、隔板の欠損、排水経路の誤接続、清掃スペース不足が隠れている場合があります。前テナントの業態で足りていても、新店舗の調理内容や排水量では不足する可能性があるため、契約前に指定工事店や厨房設計者の確認を受けてください。

まとめ:日常清掃・業者清掃・廃棄物管理を一体化する

  • バスケットと浮上油脂は毎営業日清掃する
  • 槽内は週次、内部全体は2〜3か月ごとの清掃を出発点とする
  • 高温水、大量水、ばっ気装置、油脂を流すタイプの処理剤に頼らない
  • 食品くずと、廃油・汚泥を分けて処理する
  • 産業廃棄物の委託では、許可証、書面契約、マニフェストを確認する
  • 清掃担当者、代替担当者、異常時の連絡先を明文化する
  • 物件契約前に容量、清掃スペース、費用負担を確認する

まずは閉店作業に「バスケット」「浮上油脂」「臭気」「排水速度」の4項目を追加してください。1か月分の記録を確認すれば、自店に必要な清掃周期と業者訪問の時期を、実際の汚れ方に基づいて調整できます。

参考資料

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