飲食店の店名、営業者の住所・氏名、法人の商号・本店所在地・代表者、食品衛生責任者、営業設備などを変更したときは、営業許可の変更届が必要です。ただし、店舗の移転や営業者の交代、大規模な構造変更は、変更届だけでは処理できない場合があります。
特に、個人事業から法人への切替えや第三者への店舗譲渡では、新規許可が必要なのか、事業譲渡による地位承継を利用できるのかを先に確認しなければなりません。設備工事、移転、法人化、事業譲渡は、契約や着工の前に店舗所在地を管轄する保健所へ相談してください。
食品衛生法施行規則第71条は、営業許可申請事項などに変更があった場合、施設所在地を管轄する都道府県知事等へ速やかに届け出ることを定めています。廃業時は同規則第71条の2に基づく届出が必要です。厚生労働省「食品衛生法施行規則」
飲食店営業許可の変更届・新規許可・承継・廃業の違い
変更内容によって必要な手続きは異なります。まずは次の表で大枠を確認してください。
| 発生したこと | 基本となる手続き | 注意点 |
|---|---|---|
| 店名・屋号を変更した | 変更届 | 許可証の書換え方法や原本提出の要否は自治体によって異なる |
| 個人営業者が改姓・改名した | 変更届 | 戸籍謄本・抄本などを求められる場合がある |
| 個人営業者の住所が変わった | 変更届 | 店舗移転ではなく、営業者本人の住所変更を指す |
| 同じ法人の商号・本店所在地・代表者が変わった | 変更届 | 登記事項証明書などを準備する |
| 食品衛生責任者を変更した | 変更届 | 新任者の資格を証明する書類が必要 |
| 厨房設備や施設の区画を変更した | 変更届または新規許可 | 工事前に変更前後の図面を保健所へ提示する |
| 店舗を別住所へ移転する | 旧店舗の廃業届+移転先の新規許可 | 通常の住所変更としては処理できない |
| 個人事業から法人へ切り替える | 地位承継または新規許可 | 変更届だけでは不可。事業譲渡として承継できるか事前確認する |
| 店舗事業を第三者へ譲渡する | 地位承継または廃業+新規許可 | 営業設備の大幅な変更や事業の一部譲渡では承継できない場合がある |
| 営業を完全に終了する | 廃業届 | 営業許可証の返納を求める自治体がある |
| 許可期限後も同じ店舗で営業を続ける | 継続・更新申請 | 変更届を出しても許可期限は延長されない |
新宿区は、営業所の移転や営業者の変更について、原則として廃業届と新規許可申請が必要と案内しています。ただし、相続、法人の合併・分割、事業譲渡では、地位承継を利用できる場合があります。新宿区「営業許可等の手続きについて」
飲食店営業許可の変更届が必要になる主なケース
店名・屋号を変更するとき
営業施設の名称や屋号を変えた場合は、変更届の対象です。看板、予約サイト、Googleビジネスプロフィールなどの表示を変更しても、保健所に登録された情報が自動で更新されるわけではありません。
営業許可証に旧店名が記載されている場合、許可証の書換えや差替えが必要になることがあります。営業許可証の原本を提出・提示するかどうかは、管轄保健所へ確認してください。
個人営業者の氏名・住所が変わったとき
結婚や離婚などによる改姓・改名、営業者本人の住所変更は、一般に変更届で処理します。自治体によっては、戸籍謄本・抄本や本人確認書類など、変更の事実を確認できる書類が必要です。
一方、親族や共同経営者へ営業名義を移すことは、単なる氏名変更ではありません。営業者の交代に当たるため、地位承継または新規許可の検討が必要です。
法人の商号・本店所在地・代表者が変わったとき
同じ法人が営業を継続したまま、法人名、本店所在地、代表者などが変わった場合は、変更届の対象となるのが基本です。変更後の登記事項証明書を求められる場合があります。
ただし、別法人へ営業を移す場合は、代表者変更や商号変更ではありません。営業許可上の営業者が別の法人になるため、地位承継または新規許可が必要です。
個人事業を法人化するとき
個人事業主と法人は別の営業者です。そのため、法人化を通常の変更届だけで処理することはできません。
一方、2023年12月13日以降は、食品衛生法上の事業譲渡について、譲受人が地位承継届を提出することで、新たな許可を取得せずに営業者の地位を引き継げる制度が設けられています。厚生労働省は、法人成りの場合についても、個人事業主と設立後の法人との譲渡契約書などが想定されると案内しています。厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されました」
ただし、承継の対象となる営業事業が一体として譲渡されることや、施設の同一性が保たれていることなどが前提です。法人化と同時に大規模改装や営業内容の変更を行う場合は、新規許可が必要になる可能性があります。
食品衛生責任者を変更するとき
退職、異動、休職などにより食品衛生責任者が交代した場合は、変更届を提出します。主な必要書類は次のとおりです。
- 営業許可申請事項・営業届出事項変更届
- 新しい食品衛生責任者の資格を証明する書類
- 営業許可証または許可番号が分かる資料
資格証明書の例には、食品衛生責任者養成講習会の修了証、調理師免許証、製菓衛生師免許証、栄養士免許証などがあります。認められる資格や原本提示の要否は自治体へ確認してください。
責任者の交代時には、変更届だけでなく、衛生管理計画、冷蔵・冷凍設備の温度記録、清掃記録、従業員教育、事故発生時の連絡先も引き継ぎましょう。衛生管理の見直しには、飲食店 HACCP 衛生管理計画の作り方【2026年版】|3分類・記録・保存期間も活用してください。
厨房設備や店舗レイアウトを変更するとき
シンク、手洗い設備、冷蔵設備、食品保管設備、給排水設備、厨房と客席の区画など、申請時の図面に記載した施設設備を変更する場合は、変更届や図面の提出が必要になることがあります。
横浜市は、許可を受けている施設の一部を変更する場合、施設基準への適合を確認するため、事前に相談するよう案内しています。横浜市「食品関係の営業に係る申請・届出」
次の工事は、変更届だけで済むと自己判断せず、着工前に図面を提示してください。
- 厨房の位置や面積を大きく変える
- 厨房を縮小して客席を増設する
- 手洗い器やシンクを撤去・移設する
- 壁や扉を撤去して厨房の区画を変える
- 食品製造用の区画を新設する
- セントラルキッチン機能を追加する
- 水道水から井戸水などへ切り替える
同じ場所に同等品の冷蔵庫や調理機器を入れ替えるだけで、施設図面や営業内容が変わらない場合は、届出を求められないこともあります。ただし、施設基準に関わる設備は保健所へ確認してください。
大規模改装では消防関係の届出や消防用設備の確認が必要になる場合もあります。飲食店 防火対象物使用開始届【2026年版】|提出期限・必要図面・工事届との違いも併せて確認しましょう。
営業形態や主な取扱食品を変えるとき
季節メニューを追加するたびに変更届が必要になるわけではありません。ただし、申請時の営業形態や主な取扱食品を実質的に変更する場合は、変更届、営業届出、別業種の営業許可などが必要になる可能性があります。
例えば、店内提供だけを行っていた飲食店が、包装した惣菜や菓子を継続的に製造し、卸売や通販を始める場合、飲食店営業許可だけで対応できるとは限りません。商品、製造工程、包装方法、保存方法、消費期限の設定、販売先を整理して保健所へ相談してください。
変更届の期限と必要書類
法令上は「速やかに」。具体的な期限は自治体ごとに確認する
食品衛生法施行規則第71条は、変更後に「速やかに」届け出ることを求めています。全国一律で「何日以内」と定めているわけではありませんが、自治体の規則や案内で具体的な期限が示される場合があります。
例えば新宿区は、変更届と廃業届を10日以内に提出するよう案内しています。変更が決まった段階で管轄保健所へ確認し、変更後はすぐに提出できるよう書類を準備しましょう。
期限を過ぎた場合も放置せず、実際の変更日、変更内容、許可番号を整理して保健所へ連絡してください。変更日を事実と異なる日付で記載してはいけません。
変更内容別の必要書類
| 変更内容 | 準備する書類の例 |
|---|---|
| 店名・屋号 | 変更届、営業許可証 |
| 個人営業者の改姓・改名 | 変更届、戸籍謄本・抄本など、営業許可証 |
| 個人営業者の住所 | 変更届、本人確認書類など |
| 法人の商号・本店所在地・代表者 | 変更届、登記事項証明書、営業許可証 |
| 食品衛生責任者 | 変更届、新任者の資格証明書 |
| 厨房・設備・区画 | 変更届、変更後の平面図、自治体が求める場合は変更前の図面 |
| 井戸水などへの切替え | 変更届、図面、水質検査結果を証する書類など |
| 廃業 | 廃業届、営業許可証 |
必要部数、証明書の有効期間、原本・コピーの扱い、営業許可証の返納・書換え方法は自治体によって異なります。大阪市も、変更内容ごとに変更届、営業許可証、図面、登記事項証明書、資格証明書などを案内しています。大阪市「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」
食品衛生申請等システムでオンライン提出する手順
変更届、地位承継届、廃業届は、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」から提出できる場合があります。ただし、紙・オンラインの取扱いや添付書類の提出方法は自治体によって異なります。
- 食品衛生申請等システムへログインする
- 許可済み・届出済みの営業施設を選ぶ
- 変更届出、地位承継または廃業の手続きを選ぶ
- 変更日、廃業日、変更内容などを入力する
- 資格証明書、登記事項証明書、図面、譲渡を証する書類などを添付する
- 入力内容を確認して登録する
- 登録完了画面に表示される整理番号を保存する
- 保健所からの受付通知または差戻し通知を確認する
厚生労働省のFAQによると、整理番号が表示されない状態で終了した場合は、登録が正しく完了していません。登録後は保健所の確認待ちとなり、届出はステータスが「受付済」になった時点で手続き完了となります。厚生労働省「食品衛生申請等システム FAQ」
確認待ちの状態では事業者側で修正できない場合があります。入力ミスに気付いたときは、管轄保健所へ連絡して差戻しを依頼してください。
変更手続きで失敗しない実務フロー
1. 許可証と当初の申請内容を確認する
営業許可証、許可番号、許可期限、営業者名、店舗名、食品衛生責任者、保健所へ提出した施設図面を確認します。変更前の登録内容が分からない場合は、先に保健所へ照会してください。
2. 工事や契約の前に保健所へ相談する
設備工事の相談には、次の資料を用意すると変更範囲を判断しやすくなります。
- 現在の平面図
- 工事後の平面図
- 厨房機器の配置と寸法
- 変更箇所を色分けした図面
- 変更後のメニューと調理工程
- テイクアウト、通販、卸売の有無
- 工事予定日と営業再開予定日
工事後に施設基準への不適合が判明すると、追加工事や営業開始日の延期につながります。着工前の確認が重要です。
3. 変更届と更新申請を混同しない
変更届を提出しても、現在の許可期限は延びません。許可満了日が近い場合は、変更届と更新申請の順番を保健所へ確認してください。
更新時の手続きは、飲食店 営業許可 更新ガイド【2026年版】|期限・必要書類・施設検査・期限切れ対応で解説しています。
4. 受付記録と変更後の書類を保存する
変更届の控え、受付メール、整理番号、変更後の図面、資格証明書、登記事項証明書などを店舗別に保存します。多店舗経営では、次の情報を一覧化すると届出漏れを防ぎやすくなります。
- 営業許可番号と許可期限
- 営業者名と法人代表者
- 食品衛生責任者の氏名
- 最終変更日と変更内容
- 保健所の担当窓口
- 変更届の受付日と整理番号
事業譲渡・法人成りで地位承継を利用する際の注意点
事業譲渡による承継では、譲受人が許可上の権利だけでなく、食品衛生法上の義務や責任も引き継ぎます。譲渡前に未届の設備変更や衛生上の問題があった場合、承継後の営業者が対応を求められることがあります。
また、承継前後で施設や営業内容が大きく変わり、従来の施設と同一といえない場合は、新規許可が必要になる可能性があります。譲渡契約を締結する前に、次の事項を保健所と確認してください。
- 承継対象となる営業許可の種類と許可番号
- 営業事業が一体として譲渡されるか
- 厨房設備や施設区画に変更がないか
- 食品衛生責任者を変更するか
- 未提出の変更届や行政指導がないか
- 承継届と変更届を同時に提出する必要があるか
詳しい要件は、飲食店営業許可の事業譲渡・承継【2026年版】|地位承継の条件・必要書類・届出手順も確認してください。
廃業届が必要になるケース
営業を完全に終了するときは、営業許可の廃業届を提出します。店舗移転や営業者変更で旧許可を終了させる場合も、承継手続きを利用しないときは廃業届が必要になるのが一般的です。
廃業届には、通常、次の事項を記載します。
- 届出者の氏名・住所
- 法人の場合は名称・所在地・代表者
- 施設の所在地と名称・屋号
- 廃業年月日
- 営業許可番号と許可年月日
営業許可証の返納を求める自治体もあります。許可証を紛失している場合は、紛失届など別の書類が必要になることがあるため、保健所へ確認してください。
閉店時は、営業許可の廃業届だけで全手続きが終わるわけではありません。税務、雇用保険、社会保険、消防、酒類販売業免許、深夜酒類提供飲食店営業など、自店が利用している制度や許認可ごとに廃止・異動手続きを確認しましょう。
よくある質問
Q. 店名だけの変更でも届出が必要ですか?
必要です。営業施設の名称・屋号は変更届の対象です。営業許可証の書換えや原本提出が必要かどうかも保健所へ確認してください。
Q. 代表取締役が交代した場合は新規許可ですか?
同じ法人が営業を続ける場合は、一般に変更届で対応します。変更後の登記事項証明書などを求められる場合があります。別法人への事業移管は、単なる代表者変更ではありません。
Q. 個人事業を法人化した場合も変更届で済みますか?
変更届だけでは済みません。個人と法人は別の営業者です。ただし、事業譲渡の要件を満たせば、地位承継を利用できる場合があります。法人設立や営業開始日の切替え前に保健所へ相談してください。
Q. 厨房機器を同等品へ交換するだけでも変更届が必要ですか?
位置、用途、能力、給排水、施設図面などが変わらない同等品への交換であれば、届出を求められないこともあります。ただし、シンク、手洗い設備、給排水設備、区画など施設基準に関わる変更は、自己判断せず保健所へ確認してください。
Q. 移転先でも現在の営業許可を使えますか?
原則として使えません。営業許可は審査を受けた施設に対応するため、旧店舗の廃業届と移転先での新規許可申請が必要です。移転先の工事を始める前に、設計図を保健所へ提示してください。
Q. 変更届を出し忘れていました。どうすればよいですか?
放置せず、すぐに管轄保健所へ連絡してください。実際の変更日、変更内容、許可番号、準備できる証明書を伝え、提出方法の指示を受けます。
まとめ
飲食店営業許可の変更届は、店名、営業者の氏名・住所、法人情報、食品衛生責任者、営業設備などを変更したときに必要です。一方、店舗移転、営業者の交代、大規模改装、営業許可業種の追加は、新規許可や地位承継が必要になる可能性があります。
判断に迷った場合は、変更後ではなく、契約・着工・事業譲渡の前に管轄保健所へ相談してください。提出期限、必要書類、許可証の書換え、オンライン提出の取扱いは自治体によって異なるため、店舗所在地の最新案内を確認することが重要です。
参考資料
- 厚生労働省「食品衛生法施行規則」(2026年11月3日閲覧)
- 厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されました」(2026年11月3日閲覧)
- 厚生労働省「食品衛生申請等システム FAQ」(2026年11月3日閲覧)
- 新宿区「営業許可等の手続きについて」(2026年11月3日閲覧)
- 横浜市「食品関係の営業に係る申請・届出」(2026年11月3日閲覧)
- 大阪市「飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可」(2026年11月3日閲覧)

