はじめに
「面談なんて、時給を上げるか下げるか伝えるだけでしょ?」 「忙しいのに、一人ひとりと話す時間なんて取れない」
もし、あなたが評価面談をこのように捉えているとしたら、それは非常にもったいないことです。 適切に行われる面談は、単なる「査定の場」ではありません。それは、スタッフのモチベーションに火をつけ、信頼関係を深め、離職を防ぐための最強のコミュニケーションツールです。
逆に、準備不足で一方的な面談を行えば、「店長は私のことを何も見てくれていない」という不信感を生み、退職のきっかけにすらなり得ます。
この記事では、形骸化しがちな評価面談を「人材育成の起爆剤」に変えるための、事前準備から当日の具体的なトークスクリプト(台本)、そして面談後のフォローまでを時系列でまとめた「進め方マニュアル」を公開します。
1. 何のためにやるのか? 面談の「3つの目的」
まず、面談のゴールを再定義しましょう。時給を決めるのは「結果」の一部に過ぎません。
- 信頼関係の構築(承認) 日々の業務中はゆっくり話せません。1対1で向き合い、「あなたのことを見ているよ」「大切に思っているよ」と伝えることで、心理的な結びつきを強めます。
- 成長支援(フィードバック) 「できていること」を認めて自信を持たせ、「課題」を明確にして次の成長ステップを示します。教育カリキュラムの進捗確認の場でもあります。
- 意思疎通(ガス抜き) スタッフが抱えている悩みや不満、キャリアへの希望を吸い上げます。ここでガス抜きができれば、突発的な離職は激減します。
2. 【準備編】面談の質は「準備」で9割決まる
いきなり呼び出して「最近どう?」と聞くのは最悪です。スタッフも身構えてしまい、本音が出ません。
① 評価シート(スキルマップ)の準備
客観的な基準が必要です。「頑張ってるね」という曖昧な言葉ではなく、具体的な評価制度に基づいたシートを用意します。
- 項目例:「元気な挨拶ができる」「ドリンク場を一人で回せる」「後輩にOJTができる」など。
② 自己評価(事前アンケート)の実施
面談の1週間前までに、スタッフ本人に評価シートを記入してもらいます。
- ポイント:店長の評価と、本人の自己評価の「ズレ」を確認するためです。「自分はできていると思っているが、店長評価は低い」項目こそが、面談で話し合うべき重要ポイントになります。
③ 環境づくり(1on1の確保)
- 場所:バックヤードや事務所など、他のスタッフやお客さんに話が聞こえない場所。近所のカフェなど、店外で行うのもリラックスできて効果的です。
- 時間:最低でも30分、できれば1時間を確保します。
- 配置:真正面に対座すると「対決」の緊張感が生まれます。斜め向かい(L字型)に座るか、横並びに座ると話しやすくなります。
3. 【実践編】面談の流れとトークスクリプト
当日は以下の4ステップで進めます。
Step 1:アイスブレイクと感謝(開始〜5分)
いきなりダメ出しから入るのは厳禁です。まずは「安心感」を作ります。
- 目的:話しやすい雰囲気を作る。
- トーク例:
- 「忙しい中、時間を作ってくれてありがとう」
- 「最近、〇〇さんが入ってくれてからランチの回転がすごく良くなったよ。本当に助かってる」
- 「今日は査定というより、〇〇さんがもっと楽しく働けるように話し合いたいんだ」
Step 2:本人の振り返りを聞く(〜20分)
店長が話すのではなく、まずはスタッフに話させます(傾聴)。割合は「スタッフ7:店長3」を目指します。
- 目的:自己評価の確認と、本音の引き出し。
- 質問例:
- 「事前に書いてもらった自己評価シートを見て、自分なりに良くできたと思うところはどこ?」
- 「逆に、もう少し頑張りたかったなと思うところはある?」
- 「最近、仕事で困っていることや、やりづらいことはない?」
- 傾聴のコツ: 否定せずに「うん、うん」「そう考えていたんだね」と受け止めます。
Step 3:フィードバック(〜40分)
ここで初めて店長からの評価を伝えます。「サンドイッチ話法(褒める→課題→褒める)」が基本です。
- 肯定(褒める):
- 「自己評価でも高いけど、僕も挨拶は本当に素晴らしいと思ってる。お客様からの評判もいいよ」
- 改善(課題):
- 「ただ、オーダーミスの部分だけど、ここはお互い評価が少しズレているね。忙しくなると確認がおろそかになる傾向があるけど、どう思う?」
- ポイント:人格(性格)ではなく、「具体的な行動」について指摘します。
- 未来への期待(褒める):
- 「ここさえ直れば、次はバイトリーダーを任せたいと思ってるんだ。期待してるよ」
Step 4:目標設定とクロージング(〜終了)
次の半年(または四半期)の目標を合意します。
- 目的:やる気を引き出し、次への行動を明確にする。
- トーク例:
- 「じゃあ次の3ヶ月は、新人さんの教育係にチャレンジしてみようか」
- 「何か言い残したことや、僕(店長)への要望はある?」
- 「今日は話してくれてありがとう。これからも頼りにしてるよ」
4. やってはいけない「NG面談」4選
良かれと思ってやったことが、逆効果になるパターンです。
- NG1:他のスタッフと比較する
- 「Aさんはできているのに、なんで君はできないの?」
- → 対策:比較対象は「過去の本人」か「基準(マニュアル)」にします。「先月より良くなったね」と伝えます。
- NG2:一方的に説教する
- 「だからお前はダメなんだ、もっと気合を入れろ」
- → 対策:店長のマネジメントスキル研修を受け、コーチング(問いかけて引き出す)手法を学びましょう。
- NG3:結果だけを見てプロセスを無視する
- 「売上が行ってないからダメ」
- → 対策:「売上目標は未達だけど、POP作りを頑張ってくれたのは見ているよ」と、プロセスを承認します。
- NG4:メモを取らずに聞く
- → 対策:メモを取ることは「あなたの話を真剣に聞いている」というサインです。必ず記録を残しましょう。
5. 【重要】面談後のフォロー(After)
面談は「やりっぱなし」が一番危険です。 「あの時こう言ったのに、何も変わってない」と思われたら、信頼は地に落ちます。
- 約束を守る
- 「シフトの件、調整してみるね」と言ったなら、必ず結果を報告します。
- 「新しい備品を買う」と言ったなら、すぐに発注します。
- 日々の声かけ(承認の継続)
- 面談で決めた目標について、朝礼や日々の営業中にフィードバックします。「今の接客、面談で話した通りにできてたね!」とリアルタイムで伝えるのが最も効果的です。
- 給与への反映
- 評価に基づいて昇給が決まった場合は、給与明細を渡す際にも「今回上がったのは、〇〇を頑張ったからだよ」と一言添えます。
まとめ
スタッフ評価面談とは、店長からスタッフへの「プレゼント」のようなものです。
「あなたの成長を願っている」 「あなたの働きを見て、感謝している」
というメッセージを、時間というコストをかけて伝える場です。 マニュアル通りに進めるだけでなく、目の前のスタッフ一人ひとりに愛情を持って向き合うこと。それさえあれば、多少トークが拙くても、想いは必ず伝わり、スタッフは「この店のために頑張ろう」と思ってくれるはずです。


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