結論からいうと、飲食店の休憩時間は「客足が途切れたら休む」ではなく、交替担当と開始・終了時刻を決め、シフトに組み込む必要があります。実労働時間が6時間を超え8時間以下なら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上の休憩を、勤務の途中に与えなければなりません。正社員だけでなく、パート・アルバイトにも適用される労働基準法第34条のルールです。e-Gov法令検索「労働基準法」
飲食店で特に注意したいのが、休憩中の電話・来客対応、デリバリー端末の監視、調理場での待機です。店内にいても業務から完全に離れ、時間を自由に利用できれば休憩になり得ます。一方、来客や注文があればすぐ対応する状態は、原則として手待時間に当たり、休憩ではなく労働時間です。厚生労働省「今日から使える労働法 FAQ5」
本記事では、2026年10月11日時点の法令と厚生労働省・労働局の公表資料を基に、必要な休憩時間、まかない・中抜け・待機時間の判定、交替休憩の組み方、休憩を取れなかった日の修正手順を解説します。
飲食店の休憩時間は何分必要か
法定休憩の長さは、シフト表に記載した所定労働時間ではなく、休憩を除いて実際に働いた時間で判定します。休憩予定中に接客や電話対応をした時間は、労働時間へ戻して計算しなければなりません。
| 1日の実労働時間 | 必要な法定休憩 | 飲食店での注意点 |
|---|---|---|
| 6時間以下 | 法律上の付与義務なし | 6時間ちょうどなら法定休憩は不要。ただし、準備や片付けで6時間を超えないよう注意 |
| 6時間超~8時間以下 | 45分以上 | 7時間勤務や、実労働時間が8時間ちょうどの勤務が該当 |
| 8時間超 | 1時間以上 | 45分休憩の日でも、残業で8時間を超えるなら合計1時間以上が必要 |
厚生労働省も、6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩が必要と説明しています。厚生労働省「休憩時間は法律で決まっていますか」
「6時間ちょうど」と「8時間ちょうど」の扱い
労働基準法第34条は「6時間を超える」「8時間を超える」と定めています。そのため、実労働時間が6時間ちょうどなら法定休憩の付与義務はなく、8時間ちょうどなら45分以上で足ります。
たとえば、10時から16時まで休憩なしで働き、その後5分間の清掃を行えば、実労働時間は6時間5分です。この場合、勤務途中に45分以上の休憩が必要です。清掃終了後に45分間残しても「労働時間の途中」の休憩にはなりません。6時間を超えて働かせる可能性がある日は、あらかじめ休憩を組むか、超過が判明した時点で作業を再開する前に休憩を確保します。
残業で8時間を超える日は追加の15分が必要
45分の休憩を与えていても、残業によって実労働時間が8時間を超える場合は、終業までの途中に追加で15分以上を与え、休憩を合計1時間以上にしなければなりません。厚生労働省の労働法eラーニングでも、この扱いが明示されています。厚生労働省「今日から使える労働法 FAQ5」
なお、休憩を追加しても、法定労働時間を超える労働そのものが自動的に適法になるわけではありません。時間外労働を命じる場合は、労働契約・就業規則等の根拠に加え、原則として36協定の締結と届出が必要です。詳しくは飲食店 36協定ガイド【2026年版】で確認してください。
休憩として認められる3つの条件
法定休憩は、単に作業をしていない時間ではありません。次の条件を満たす必要があります。
- 労働時間の途中に与えること
- 労働から離れることが保障されていること
- 自由に利用できること
出勤前や退勤後の時間を休憩として処理することはできません。また、「客が来なければ座っていてよい」という時間も、来客時に対応する義務が残っているなら休憩にはなりません。
飲食店では交替休憩が認められている
休憩は一斉付与が原則ですが、労働基準法別表第1第14号の飲食店など接客娯楽業に該当する事業では、労働基準法施行規則第31条により一斉付与の原則が適用されません。そのため、飲食店がホールとキッチンを交替で休ませる際、一斉休憩を外すための労使協定は原則として不要です。厚生労働省「労働基準法施行規則」
ただし、交替で休ませられることと、休憩中も働かせてよいことは別です。休憩に入ったスタッフをレジ、電話、配膳、洗い場、デリバリー端末などの担当から外し、代替担当者を明確にしてください。厚生労働省「一斉休憩② 現行の規定・解釈」
休憩は分割できるが、細切れにしすぎない
45分を「15分+30分」、1時間を「30分+30分」のように分けること自体は可能です。ただし、分割した時間がごく短く、自由利用が事実上制限される場合は、労働から完全に解放された休憩とは認められない可能性があります。厚生労働省「休憩時間を分割する場合の注意」
飲食店ではピークの合間に数分ずつ休ませる運用が起こりがちですが、合計分数だけで判断するのは危険です。食事、移動、疲労回復が現実にできる長さを確保しましょう。
電話番・まかない・待機時間は休憩になるか
勤怠システム上は休憩でも、実際に業務をしていれば休憩とは扱えません。判断基準は、使用者の指揮命令から離れ、スタッフがその時間を自由に利用できたかどうかです。
| 場面 | 基本的な扱い | 理由・対応 |
|---|---|---|
| 客が来るまでバックヤードで待つ | 労働時間 | 来客時に直ちに対応する義務があるため |
| 休憩中に店の電話を持たせる | 労働時間になりやすい | 着信への応答を求めるなら業務から離れていない |
| デリバリー端末を監視する | 労働時間になりやすい | 注文時に操作や調理開始を求められるため |
| 業務から外れてまかないを食べる | 休憩になり得る | 接客・調理・待機の義務がなく、自由利用できることが条件 |
| まかない中に業務ミーティングを行う | 労働時間 | 業務上必要な指示・報告を行っているため |
| 新メニューの試食と意見提出 | 労働時間 | 参加や評価が業務として義務付けられている場合 |
| 休憩中にレジ対応する | 対応時間は労働時間 | 有効な休憩が法定時間を下回るなら、不足分を勤務途中に与える |
| 指示された着替え、開店準備、閉店後清掃 | 労働時間になり得る | 事業場内で行うことを義務付けている場合は始業・終業時刻へ反映する |
厚生労働省は、休憩中の電話や来客対応を業務とみなし、勤務時間に含めると説明しています。そのため、昼当番などで休憩が費やされた場合は、別途休憩を与えなければなりません。厚生労働省「昼休み中の電話・来客対応」
また、使用者の指示により、事業場内で行うことを義務付けられた制服への着替え、開店準備、業務後の清掃などは、労働時間として扱う必要があります。岡山労働局「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」
中抜け時間を休憩にする条件
ランチ営業とディナー営業の間を中抜けにする場合、その時間をスタッフが自由に利用できれば休憩として扱えます。たとえば、10時から15時まで働き、15時から17時まで自由に外出し、17時から22時まで働く場合、15時から17時が業務から完全に解放されていれば休憩になり得ます。
一方、中抜け中も仕入れ業者の受け取り、予約電話、仕込み状況の確認、店内待機などを命じる場合は、その全部または一部が労働時間と判断される可能性があります。やむを得ず呼び戻した場合は、対応時間を労働時間として記録し、有効な休憩が不足するなら勤務途中に補います。
休憩を確実に取れるシフトの作り方
休憩違反を防ぐには、本人の自己申告や店長の気配りだけに依存せず、誰がいつ交替するかをシフト作成時点で決めることが重要です。
手順1:実労働時間を洗い出す
タイムカードの打刻時間だけでなく、次の作業が打刻の外に出ていないか確認します。
- 指示された制服への着替え
- 開店前の清掃、朝礼、レジ準備
- 休憩中の電話、来客、配達対応
- 閉店後の洗い場、売上集計、戸締まり
- 退勤打刻後に行う業務上必要な引き継ぎ
実態を確認せず「シフト上は6時間だから休憩不要」と判断すると、準備や片付けによって実労働時間が6時間を超えている可能性があります。
手順2:休憩枠と交替担当をセットで決める
休憩予定には、開始・終了時刻だけでなく交替担当者も記載します。次は店舗用の簡易フォーマット例です。
| スタッフ | 勤務予定 | 休憩予定 | 交替担当 | 実績確認 |
|---|---|---|---|---|
| A・ホール | 10:00~19:00 | 14:00~15:00 | 店長 | 開始・終了を記録 |
| B・キッチン | 11:00~20:00 | 15:00~16:00 | C | 中断の有無を記録 |
| C・キッチン | 12:00~21:00 | 16:00~17:00 | B | 開始・終了を記録 |
休憩時刻を固定しにくい場合は、「13時30分から15時30分までの間に45分」のように取得可能な時間帯を決める方法もあります。ただし、忙しさを理由に未取得のまま終業しないよう、責任者と最終取得時刻を定め、アラートを設定してください。
手順3:休憩中の業務を引き継ぐ
休憩に入る前に、次の担当者を明確にします。
- 電話・予約対応
- レジと会計
- デリバリー注文の受信
- アレルギーなど責任者判断が必要な接客
- 仕入れ業者や宅配便の受け取り
「何かあれば呼ぶ」という運用では、休憩者を待機させることになりかねません。休憩者には店の電話、インカム、デリバリー端末を持たせず、交替者が判断できる情報を事前に渡しましょう。
手順4:予定と実績を分けて記録する
シフト表に1時間休憩と書いてあっても、実際に1時間取れたことの証明にはなりません。休憩の開始・終了時刻を記録できる勤怠システムを利用し、業務で中断した場合は、対応時間と修正理由を残す運用が有効です。
労働日ごとの始業・終業時刻は、使用者による現認やタイムカード、ICカード、勤怠システムなど、客観的な記録を基礎に確認するのが原則です。休憩中断が頻発する店舗では、POS操作履歴や予約電話の履歴と勤怠記録に大きなずれがないかも確認します。記録書類の整備は飲食店 法定三帳簿【2026年版】も参照してください。
手順5:労働条件と店舗ルールを一致させる
雇用時に明示した始業・終業時刻、休憩時間と、実際のシフト運用が食い違わないようにします。シフトごとに休憩時刻が変わる場合は、労働条件通知書や就業規則に基本的な与え方を定め、個別シフトで具体的な時間帯を通知する設計が考えられます。
労働条件通知書の確認は飲食店 労働条件通知書 2026年10月改正、人員配置とシフト運用の見直しは人手不足でも回るシフト表の工夫も参考にしてください。
休憩を取れなかった日が判明したときの対応
「忙しかったので休憩分の賃金を払う」という処理だけでは、休憩を勤務途中に与える義務を果たしたことにはなりません。過去の休憩を翌日にまとめて与えることもできないため、過去分の勤怠・賃金修正と、今後の運用改善を分けて行います。
- 本人と責任者へ事実確認する
予定した休憩のうち、何分働いたか、どの業務に対応したかを確認します。 - 勤怠記録を修正する
電話、接客、調理、待機などをした時間を休憩から労働時間へ戻します。 - 不足賃金を再計算する
修正後の労働時間に対する賃金を支払い、法定労働時間を超える場合は割増賃金も確認します。 - 発生した曜日・時間帯を分析する
休憩中断が特定のピーク帯や担当者に集中していないか確認します。 - 代替担当とエスカレーション先を決める
休憩中のスタッフを呼ばずに判断できる体制へ改めます。
東京労働局が公表した飲食店の監督指導事例では、労働時間が8時間を超えているにもかかわらず、勤務途中に1時間以上の休憩を与えていなかったとして、労働基準法第34条違反の是正勧告が行われています。この事例では、調理場で休憩していたため手待時間と休憩が判然とせず、改善策として休憩中はインカムを外す運用が採られました。東京労働局「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」
労働基準法第34条違反は、同法第119条により6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となり得ます。賃金を追加で払えば休憩違反が解消するわけではないため、未取得を常態化させないことが重要です。e-Gov法令検索「労働基準法」
飲食店の休憩時間に関するFAQ
Q. アルバイト本人が「休憩はいらない」と言えば働かせてもよいですか?
いいえ。法定休憩は使用者の義務であり、本人の希望だけで省略できません。「休憩を取らずに早く帰りたい」という希望があっても、実労働時間が6時間を超えるなら、勤務途中に必要な休憩を与えます。
Q. 店長には休憩を与えなくてもよいですか?
「店長」という肩書だけで休憩規制の対象外にはなりません。労働基準法上の管理監督者に該当する場合は休憩規定が適用除外となりますが、職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金などの待遇を実態に基づいて判断します。厚生労働省も、多店舗展開する飲食業の店長を名称だけで管理監督者として扱わないよう注意を促しています。厚生労働省「管理監督者の範囲の適正化に関するQ&A」
Q. 休憩中の外出を禁止できますか?
外出を許可制にすることが直ちに違法となるわけではありません。ただし、厚生労働省は、自由利用の観点から外出の申出を不許可とすることは難しく、労働者の同意を得た上で届出制にすることが望ましいと説明しています。店内にとどまらせる場合でも、電話、接客、調理、監視などを命じず、実際に時間を自由利用できる状態を確保してください。厚生労働省「休憩時間中の外出を許可制にしてもよいですか」
Q. 休憩中に1件だけ電話へ出た場合、休憩全体が無効になりますか?
少なくとも電話対応をした時間は労働時間です。電話の前後の時間は、それぞれ業務から完全に解放され、短すぎず自由に利用できていたなら、分割された休憩として認められる余地があります。ただし、有効な休憩の合計が法定時間を下回る場合は、勤務途中に不足分を与えなければなりません。
Q. 6時間シフトにも休憩を設けた方がよいですか?
実労働時間が6時間ちょうどなら法定休憩の義務はありません。ただし、厨房の暑熱環境、立ち仕事、繁忙度などを踏まえ、任意の小休止を設けることは安全衛生や定着の面で有効です。実労働時間が6時間を超えた場合は、法的に有効な休憩を合計45分以上確保する必要があります。
まとめ
飲食店の休憩時間管理で最も重要なのは、休憩を「仕事がない時間」ではなく「業務から完全に外す時間」として設計することです。実労働時間が6時間を超え8時間以下なら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上を、勤務途中に与えます。
電話番、来客対応、デリバリー端末の監視、まかない中のミーティング、呼び出し前提の待機は、休憩ではなく労働時間になり得ます。まずは直近のシフトと勤怠を照合し、休憩中のPOS操作や電話対応がないか確認してください。その上で、休憩者、交替担当、開始・終了時刻をセットでシフトへ記載しましょう。個別の勤務実態や管理監督者性の判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士へ確認してください。

