結論からいうと、2026年10月22日現在、飲食店のパート・アルバイトは、原則として「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」という2条件を満たすと雇用保険への加入が必要です。本人が加入を希望するか、店舗が正社員・アルバイトのどちらと呼んでいるかは判定基準ではありません。昼間学生などの適用除外に該当しない限り、要件を満たした時点で手続きを行います。ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」
飲食店で特に注意したいのは、固定シフトがないスタッフ、昼間学生、掛け持ち勤務者、短期契約を更新するスタッフです。また、2028年10月1日には、法律により週所定労働時間の要件が「20時間以上」から「10時間以上」へ変更されます。週10~19時間台のスタッフが多い店舗は、今から契約時間と実勤務時間を管理できる体制を整えておきましょう。厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律の概要」
この記事では、加入対象者の判定、シフト制での考え方、開業時・採用時の届出、2026年度の保険料率、退職時の手続きまでを飲食店の実務順に解説します。
飲食店の雇用保険は「週20時間」と「31日以上」で判定する
雇用保険の加入可否は、正社員、パート、アルバイト、試用期間中といった名称ではなく、雇用契約と勤務実態に基づいて判断します。「アルバイトだから対象外」「本人が希望しないから加入させない」という扱いはできません。
| 確認項目 | 2026年10月時点の基準 | 店舗で確認する資料 |
|---|---|---|
| 週所定労働時間 | 20時間以上 | 雇用契約書、労働条件通知書、シフト表、勤務実績 |
| 雇用見込み | 31日以上 | 契約期間、更新条項、同様の契約の更新実績 |
| 雇用形態 | 正社員、パート、アルバイト等の名称は問わない | 実際の雇用関係と勤務条件 |
| 本人の希望 | 加入・未加入を本人の希望だけでは選べない | 事業主が要件に基づいて判定する |
| 適用除外 | 昼間学生などは原則として対象外 | 在学状況、休学・卒業予定、課程の区分 |
「31日以上の雇用見込み」には、期間の定めがない契約や31日以上の有期契約だけでなく、31日未満の契約でも、書面に「更新する場合がある」と明示され、31日未満で雇止めすることが明示されていない場合などが含まれます。更新の明示がなくても、同様の契約で31日以上雇用した実績がある場合は対象になることがあります。厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
加入対象を判断する具体例
| 勤務条件の例 | 原則的な判定 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 1日5時間、週4日、契約期間6か月 | 加入対象 | 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある |
| 1日4時間、週4日、契約期間1年 | 原則対象外 | 週所定労働時間が16時間である |
| 週18時間契約だが、繁忙月だけ週25時間勤務 | 直ちに加入とは限らない | 一時的な追加勤務か、恒常的な労働条件の変更かを確認する |
| 週18時間契約だが、実際には毎週25時間程度の勤務が続いている | 再判定が必要 | 契約と実勤務時間に常態的な乖離がある場合、実態に基づいて判断されることがある |
| 週20時間以上の2週間契約で「更新する場合がある」と明記 | 加入対象になり得る | 31日未満で雇止めする明示がなければ、31日以上の雇用見込みに該当し得る |
| 昼間の大学に通う学生 | 原則対象外 | 休学中、卒業後も継続雇用されることが決まっている場合などは例外がある |
契約時間が曖昧だと、雇用保険だけでなく、残業、有給休暇、社会保険の判定にも支障が出ます。採用時には、勤務日数、1日当たりの時間、週所定労働時間をできる限り具体的に記載してください。書面整備については、飲食店 労働条件通知書 2026年10月改正|パート・アルバイト雇用の対応チェックリストもあわせて確認しましょう。
昼間学生は原則対象外だが例外がある
学校教育法上の学校等に在学する昼間学生は、週20時間以上働いていても原則として雇用保険の対象外です。ただし、次のような人は、他の加入要件を満たすと被保険者になる場合があります。
- 休学中の人
- 定時制課程や夜間学部等に在学する人
- 卒業予定で、卒業後も同じ事業所に継続して雇用されることが決まっている人
- 上記に準ずるものとして取り扱われる人
外国人留学生も、昼間学生に該当する場合は雇用保険上、原則として同じ扱いです。個別の学校・課程が昼間学生に当たるか不明な場合は、学校または管轄ハローワークへ確認してください。東京ハローワーク「被保険者に関するQ&A」
雇用保険の対象外でも、雇用された労働者である以上、労災保険は原則として適用されます。「学生だから労働保険の手続きは何も必要ない」と考えないようにしてください。高校生を採用する際の年齢証明や深夜勤務の制限は、飲食店 高校生アルバイト 雇用ルール【2026年版】|18歳未満の深夜勤務・年齢証明・シフト管理で解説しています。
掛け持ち勤務は原則として勤務先ごとに判断する
一般的なダブルワークでは、複数の勤務先の労働時間を単純に合算し、それぞれの店舗で雇用保険へ加入する仕組みではありません。各雇用関係について加入要件を確認し、同時に2つ以上の事業所で通常の被保険者になることはできないため、原則として主たる賃金を受ける一つの雇用関係で被保険者になります。
ただし、65歳以上には「雇用保険マルチジョブホルダー制度」があります。異なる事業主の2事業所で、次の要件をすべて満たす場合、本人の申出によって特例加入できます。
- 2事業所のそれぞれで週所定労働時間が5時間以上20時間未満である
- 2事業所の週所定労働時間を合計すると20時間以上になる
- それぞれの事業所で31日以上の雇用見込みがある
この制度では、本人が住所または居所を管轄するハローワークへ申出を行い、原則として申出日から資格を取得します。通常の資格取得届とは手続きが異なり、過去に遡って加入することはできません。対象者から書類の記載依頼を受けた店舗は、速やかに対応してください。厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度Q&A」
シフト制アルバイトの週20時間をどう判断するか
飲食店では、毎週の勤務日が変わる希望シフト制が多く使われます。この場合も、まずは雇用契約書や労働条件通知書に定めた週所定労働時間と、シフトを決める基本的なルールを確認します。
労働契約書等に勤務時間の基本的な考え方が定められていれば、その内容に沿って判断します。一方、週所定労働時間が定められていない、シフトが直前まで分からない、契約内容と実際の勤務時間に常態的な乖離がある場合は、実際の勤務時間に基づいて平均の労働時間を算定します。厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
飲食店で避けたい契約書・シフト管理
- 「勤務時間はシフトによる」とだけ記載し、始業・終業時刻や目安時間を示さない
- 契約書では週15時間だが、実際には毎週25時間程度働かせている
- 週20時間を超えないよう、勤務後にシフト表だけを書き換える
- 契約更新後も古い労働条件通知書を使い続ける
- 店長の口頭指示だけで恒常的に勤務日数を増減させる
実態とのずれを防ぐには、「1日5時間、週4日を基本とする」「週20時間程度」「勤務可能な曜日」「シフトを通知する期限」などを採用時に整理します。勤務条件を恒常的に変更するときは、本人と合意したうえで書面を更新し、雇用保険の資格取得・喪失を再判定してください。
一時的に週20時間未満になった場合
シフトの減少により臨時的・一時的に週20時間を下回っただけで、直ちに資格を失うわけではありません。一方、契約変更などによって恒常的に20時間未満となる見込みになった場合は、被保険者でなくなった日を確認して資格喪失手続きを行います。
月ごとの繁閑差が大きい店舗では、次の項目をスタッフ台帳で管理すると判定漏れを防ぎやすくなります。
- 契約上の週所定労働時間
- 月ごとの実勤務時間と週平均の推移
- 勤務時間を変更した日と変更理由
- 変更が一時的か恒常的か
- 雇用保険の資格取得日・資格喪失日
出勤簿、賃金台帳、労働者名簿の整備方法は、飲食店 法定三帳簿【2026年版】|労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作り方と保存期間を参考にしてください。
開業時と採用時に必要な雇用保険の手続き
初めてスタッフを雇うときは、「労働者を雇ったことで必要になる労働保険の手続き」と「雇用保険の加入対象者を雇ったことで必要になる手続き」を分けて考えます。
- 労働者を1人でも雇った場合:雇用保険の対象外となる短時間スタッフや昼間学生であっても、原則として労災保険の保険関係成立手続きが必要です。
- 雇用保険の加入対象者を初めて雇った場合:雇用保険適用事業所設置届と、その従業員の資格取得届が必要です。
通常の飲食店は、労災保険と雇用保険の保険料をまとめて申告・納付する「一元適用事業」に該当します。
| 手続き | 主な期限 | 主な提出先 |
|---|---|---|
| 労働保険 保険関係成立届 | 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 | 所轄の労働基準監督署 |
| 労働保険 概算保険料申告書 | 保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内 | 労働基準監督署、都道府県労働局、金融機関等 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 雇用保険の保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 | 所轄のハローワーク |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで | 所轄のハローワーク |
提出書類や確認資料は、事業形態や地域、初回届出かどうかによって異なることがあります。開業時は、管轄の労働基準監督署とハローワークへ事前に確認すると安全です。厚生労働省「労働保険の適用・徴収」
資格取得届を出す前の確認リスト
- 雇用契約書で週所定労働時間と契約期間を確認する
- 31日以上の雇用見込みがあるか確認する
- 昼間学生か、休学・定時制・卒業予定等の例外に該当するか確認する
- 前職で使用していた雇用保険被保険者番号を確認する
- マイナンバーの番号確認と本人確認を適切に行う
- 入社日または加入要件を満たした日から資格取得日を確定する
- 被保険者となった月の翌月10日までに資格取得届を提出する
- 交付された被保険者証と資格取得等確認通知書を本人へ渡す
雇用保険の被保険者番号は、一人につき一つの固有番号です。本人が番号を紛失している場合は、新しい番号を取得する前に、資格取得届の備考欄へ前職の会社名などを記載してハローワークへ照会します。東京ハローワーク「被保険者に関するQ&A」
提出期限を過ぎた場合
期限を過ぎても、未加入のまま放置せず速やかに届け出てください。提出が遅れた期間や状況に応じて、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳、労働者名簿、遅延理由書などの追加資料を求められる場合があります。資格取得届の正式な期限は「被保険者となった日の属する月の翌月10日まで」です。厚生労働省「手続き一覧表」
資格取得届、資格喪失届、労働保険関係の手続きは、対象手続きであればe-Govから電子申請できます。採用・退職が多い店舗では、電子公文書の受領、処理状況、提出控えを一元管理する運用を決めておきましょう。厚生労働省「e-Gov電子申請利用マニュアルの紹介」
2026年度の雇用保険料率と給与計算
2026年4月1日から2027年3月31日までの一般の事業における雇用保険料率は、労働者負担が5/1,000、事業主負担が8.5/1,000、合計13.5/1,000です。通常の飲食店は「一般の事業」の料率で計算します。厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
| 負担者 | 2026年度の料率 | 対象賃金18万円の場合 |
|---|---|---|
| 労働者 | 5/1,000 | 900円 |
| 事業主 | 8.5/1,000 | 1,530円 |
| 合計 | 13.5/1,000 | 2,430円 |
上記は、雇用保険料の対象となる賃金が18万円である場合の単純計算です。労働者負担分の900円は給与から控除し、事業主は事業主負担分と合わせて申告・納付します。
保険料の対象となる賃金は基本給だけではありません。原則として、残業代、深夜手当、通勤手当、賞与など、名称を問わず労働の対償として支払うものを含みます。税金や社会保険料を控除する前の総賃金額を基礎にする点にも注意してください。厚生労働省「雇用保険料の対象となる賃金」
労働者負担分は給与計算時に控除しますが、店舗がハローワークへ従業員ごとに毎月納付する仕組みではありません。事業主は、原則として労働保険の年度更新で前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付します。
雇用保険と健康保険・厚生年金保険では、加入条件も保険料の計算方法も異なります。「雇用保険に入ったから社会保険にも自動加入」「社会保険の対象外だから雇用保険も不要」とは判断できません。社会保険の判定は、飲食店 社会保険【2026年10月改正】|月額8.8万円要件撤廃後の加入条件と手続きで別に確認してください。
採用後・退職時に加入漏れを防ぐ運用方法
雇用保険は、入社時に一度判定して終わりではありません。シフト増加、契約更新、学生の卒業・休学、掛け持ち勤務、退職などによって資格関係が変わります。
毎月確認したいスタッフ
- 週所定労働時間が18~22時間程度のスタッフ
- 契約時間と実際の勤務時間に大きな差があるスタッフ
- 31日未満の短期契約を更新したスタッフ
- 卒業、休学、定時制・夜間課程への変更があった学生
- 週20時間未満から20時間以上へ勤務条件を変更したスタッフ
- ダブルワークを開始・終了したスタッフ
- 65歳以上で複数事業所に勤務しているスタッフ
特に、採用時は週15時間だった人が、人手不足を理由に週25時間勤務へ変わり、そのまま数か月経過するケースに注意が必要です。恒常的な変更であれば、労働条件を書面で更新し、加入要件を満たした日を確認して資格取得届を提出します。
退職・恒常的な勤務時間減少時の手続き
従業員が退職した場合や、恒常的に週20時間未満となって被保険者でなくなった場合は、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。厚生労働省「手続き一覧表」
離職者が離職票の交付を希望する場合は、原則として資格喪失届とあわせて離職証明書を提出します。離職者が離職票を希望しない場合は離職証明書を省略できることがありますが、離職日に59歳以上の人は、本人の希望にかかわらず離職証明書の提出が必要です。
退職理由は失業等給付の判断に関係します。「自己都合」「契約期間満了」「解雇」などを店舗側の都合で安易に選ばず、雇用契約書、更新通知、退職届、解雇通知書、面談記録などの客観的資料と一致させてください。最終的な離職理由は、事業主と本人双方の主張や資料を確認したうえでハローワークが判定します。
2028年10月の週10時間要件へ向けて準備すること
2028年10月1日から、雇用保険の週所定労働時間要件は20時間以上から10時間以上へ変更されます。2026年10月22日時点では、まだ週20時間以上が基準であり、週10~19時間のスタッフを改正前に通常の被保険者として加入させる制度ではありません。厚生労働省「雇用保険の適用拡大」
短時間スタッフが多い飲食店では、施行直前に対象者の抽出や人件費試算を始めると負担が集中します。今から次の準備を進めておきましょう。
- 全スタッフの週所定労働時間を一覧化する
- 週10~19時間台のスタッフ数と賃金総額を把握する
- 労働条件通知書に週所定労働時間を明記する
- 契約時間と実勤務時間の乖離を定期確認する
- 給与・勤怠システムが対象者追加に対応できるか確認する
- 資格取得届を担当する店長、本部、社労士の役割を決める
- 施行前に最新の様式や実務上の取扱いを再確認する
週10時間要件の施行日は法律で定められていますが、届出様式や詳細な実務資料は施行までに更新される可能性があります。2028年の採用・人件費計画を立てる際は、厚生労働省とハローワークの最新情報を確認してください。
飲食店の雇用保険に関するFAQ
Q. アルバイト本人が加入したくないと言った場合は?
加入要件を満たす場合、本人の希望だけで対象外にはできません。給与から労働者負担分が控除されること、基本手当や育児休業給付などの制度につながることを説明し、必要な手続きを行います。
Q. 週20時間ちょうどでも加入対象ですか?
はい。「20時間以上」には週20時間ちょうどを含みます。31日以上の雇用見込みがあるか、昼間学生などの適用除外に該当しないかも確認してください。
Q. 昼間学生が春休みだけ週30時間働く場合は?
昼間学生は原則として適用除外であり、春休みなどの一時的な長期休暇中に勤務時間が増えただけで、通常は加入対象になるわけではありません。ただし、休学中、卒業後も継続雇用されることが決まっている場合などの例外に該当しないかを確認します。
Q. 個人経営店で同居家族に給与を払う場合は?
個人事業主と同居する親族は、原則として雇用保険の被保険者になりません。ただし、事業主の指揮命令に従っていることが明確で、労働時間・休日・賃金などが他の従業員と同様に管理され、事業主と利益を一にする地位にない場合には、被保険者と認められることがあります。給与を支払っている事実だけで判断せず、資格取得前に管轄ハローワークへ相談してください。厚生労働省「Q&A~事業主の皆様へ~」
Q. 雇用保険の手続きを税理士へ任せてもよいですか?
事業主や自社の従業員が自社の手続きを行うことはできますが、他人の求めに応じて報酬を得て雇用保険関係の書類作成・提出代行を行う業務には、社会保険労務士法上の制限があります。外部へ委託する場合は、社会保険労務士または労働保険事務組合を検討してください。税理士が社会保険労務士資格を有する場合などを除き、税理士には給与データの作成・共有や会計処理の範囲を確認し、雇用保険の届出代行と混同しないことが重要です。
まとめ
飲食店の雇用保険は、スタッフの呼称ではなく、週所定労働時間、31日以上の雇用見込み、学生区分、契約更新の実態で判定します。2026年10月22日時点では週20時間以上が基準であり、対象者の資格取得届は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出します。
固定シフトのない店舗ほど、契約書と勤務実態のずれが加入漏れにつながります。「契約時間」「実勤務時間」「学生区分」「被保険者番号」「資格取得・喪失日」をスタッフ台帳で一元管理し、毎月見直してください。あわせて、2028年10月1日の週10時間への適用拡大に備え、週10~19時間台のスタッフ数と賃金総額を把握しておきましょう。

